第十六章 調子に乗るということ

慢心する、これが人間だけに持っている欠点と指摘しました。
平たく言えば、すぐ調子に乗る訳です。
調子に乗るという言葉からは、軽薄といった軽い感じを持たれるかもしれませんが、これが、人間が犯す罪の最大の原因になっているのです。
普通の人間は意識して罪を犯すことは、ほとんどありません。無意識と意識の中間にいるときが一番罪を犯す危険性が高いのです。
意識して罪を犯すことは有り得ません。意識してすること自体でその行為は罪とは言えなくなります。
たとえば、意識して嘘をつく。そこには意図があるはずです。意図がある嘘は存在し得ません。
ほとんどの人間は意識を無意識にひっくり返してから嘘をつくのです。そのとき意図まで無意識の中に放り投げる。だから罪になるのです。
意図があるのに無意識の中に消してしまうことが罪であるのです。
調子に乗っている人間はまさにこの状態で積極的行動に出るから影響が大きい。
嘘なら消極的行動だから、影響の輪が小さい。
調子に乗る人間の与える影響の輪は時には地球全体にまで波及することもあるのです。
人間が犯した今までの数ある罪はみんな調子に乗った人間がばらまいたものです。
この地球のへそにあたる日本に原爆を落とした人間も調子に乗ったのです。多くの人間を虐殺した人間もそうです。
つい、この間人間がつくったテレビというものを見たら、その調子に乗った人間の記録フィルムが映像に出ていましたが、目が同じです。慢心の目そのものです。
やはり人間社会は巨大な数の人間を有し、その中でトップクラスの地位に就く人間はどうしても慢心が出て、つい調子に乗って大きな罪を犯してしまいます。
地位が高いだけに罰が与えられないことを知っての罪です。
罰意識は持っているのですが、地位が高かったり、独裁者になると罪を罰する基準の掟が自分そのものになってしまいますから自分を罰することはしない分、他人には峻烈な罰を加える結果が原爆投下であり、大虐殺になる訳です。
罪意識が無意識下に抑えられ、罰意識だけが意識上に強烈にあるのがこういった人間の特性なのです。
こういったことの背景にあるのが、人間としての慢心であり調子に乗るということだから軽々しく扱えない訳です。
では調子に乗る原因はどこにあるのか。
それは自己欺瞞から来ています。自分に対して嘘をつくことです。
人間は地球上で本来自信のない動物だったのです。腕力・暴力では、人間は中の下程度のものだったから自信があるはずがない。草食動物の態度を見ていたら自信の無さがありありと分かります。
肉食動物の態度は自信満々です。
ライオンの態度を見ていると、もう生まれつき自信満々です。
その人間が考えるという智恵を身につけたとき、肉体的劣等感を潜在意識下に隠すために、自分に嘘をついたのです。人間は強いのだという意識を植え付けるために。
それが自己欺瞞の始まりです。
それ以来、嘘の上塗りの生き方をしてきた結果、プライドという性質の悪い意識を潜在意識に刻印してしまった。
普通の人間のプライドは潜在意識に潜んでいて普段はちょっぴり頭を覗かせる程度だけだから大した問題にはならないのですが、地位が高くなった人間はそのプライドが顕在化して出てくる。
それが調子に乗るということであり、人間社会のみならず地球をも傷つけることをする。
調子に乗る人間を如何にするか。大きな課題です。