第三十二章 テンシの役割−2

人間は月に、約30年前に、宇宙飛行士を送り込んでいます。それから何の進歩も、新しい発見も無く、現在に至っています。
これは、何か、おかしいと思いませんでしょうか。
30年前の科学技術力で月に行ったのに、それ以後、月に関する情報があまり出てこない。そして、あたかもそのことをカムフラージュするかのように、火星、木星、土星、冥王星と探査を続けている。
テンシの話ですと、人間は、すでに月のことはほとんど知り尽くしているようです。
人間だけの力で月を征服しようと考えているらしいのです。
そして、最近になって、その兆しが表に現れてきたのです。
地球と月の間に、宇宙ステーションを建設して、着々と月への侵略を進めておるのです。
しかし、反省編で、お話しましたように、人間が未知の世界へ旅立つのは、侵略が目的なのです。
今までは、地球自体に未知な世界があったから、地球上をくまなく探査して、その都度侵略、支配してきたのです。
何故、人間は、このようなことを続けるのか。
それは、飽くなき欲望から来ているのです。最初は本能的欲望から端を発し、そのうち、自分たちで創った神をも征服しようとする本質的欲望まで拡がっているのです。
テンシは、十分にそのことを承知しています。
しかし、テンシもだいぶん大人になったようで、地球で住んでみて、人間にもいろいろなのがいて、決して全部が悪いのではないことを理解しています。
ただ、先ほど申しあげたように、一部の人間たちが、月の実態を把握しておきながら、隠しておるのです。これは何か意図があるはずです。なければ堂々と情報公開するはずです。一時は二つの大国が競争していた時代でしたから、宇宙開発にも競争意識が働いて、「どうだ、我が国は、ここまで月のことを知った」などとやっていたのですが、最近はその競争がなくなって、逆に協力してやっておる。
それなのに、一般人間には極めて情報開示が少ないのです。
結局、過去に帝国植民地政策をやってきた根性と同じなのです。
このまま、人間独自の月へのプロジェクトが進めば、テンシは、また怒りで暴走しかねません。
それよりも、テンシの力を借りて、わたしの意見も良く聞いて、来るべき2020年に向けて、お互いに協力するべきなのです。これは、わたしの責任であります。
だから、テンシには、短気をおこさずに、テンシの役割を果たして欲しいのです。
まあ、何事も独りでやれないことを、複数でやると意見の食い違いがおきて、途中でトラブルものです。
テンシからしたら、月は自分の肉体なのですから、知り尽くしています。いくら人間が、かなりのことを知ったにしても、それは比較になりません。
ここは、ひとつ、テンシの協力を得て、月で住めるようになるために解決しておくべき課題を、きっちりと認識しておくべきだと思います。