第三十九章 ローマ字の多様性

これからの言語は、表意性重視から、表音性重視の時代に変わっていくものと思われます。
それは、どうしてかと申しますと、高度情報化社会と関係があるのです。
コンピュータ・ネットワーク社会になっていきますと、文字情報ではあるのですが、この文字情報は、言葉ではなく、記号として扱われていきます。
しかも、これからは、マルチメディア、デジタル社会となりますと、情報は文字や記号から音に移っていきます。
音は話し言葉であります。
表意文字は、話し言葉ではなく、書き・読み言葉であります。
そういたしますと、言葉の広がりという点においては、表音性の方が、遥かに多様性を持っておるのです。
しかも、表音性は感性に訴えるのに対して、表意性は知性に訴える特性を本質的に持っております。
つまり、気分に訴えるか、理屈に訴えるかの違いがあり、これからの社会変化を洞察してみますと、これは気分の方に分があるように思うのであります。
女性の進出が目ざましいのが、世界的傾向になっておりますが、そうなりますと、ますます、感性鋭い女性の舞台になっていくと思います。
そういたしますと、理屈をこね回して、難しい語彙を使った文章はますます避けられて、音の響きを気持ちよく感じるといった言葉が、多用されることになるでしょう。
やまと言葉は本来言霊であると以前申しあげました。
したがって、仮名表現の方が漢字表現より、人間の感性、その底にある霊性に、より訴えるものがある訳です。
したがって、まずこれからの話し言葉としての日本語には仮名表現がますます多用されるものと思われます。
最近の若い人たちには、年配の人には理解できない言葉が多く使われております。
たとえば、ウルウル、という言葉があるそうです。わたしもまったく意味がわかりませんが、若い人たちの間では、常識の言葉であるそうです。
まったく、その文字からは、意味が汲みとれない言葉、つまり表音文字である訳です。
こういう表現が、これからますます増えていくと思われます。
そういたしますと、たとえば、ウルウルという言葉を、どう文字にすれば、一番多用されるかという問題になる訳であります。
「宇留宇留」と万葉仮名のように書くか、「うるうる」「ウルウル」と仮名文字で書くか、現代では、当然「ウルウル」が一番でしょう。
しかし、これからコンピュータ社会になりますと、もちろん文字変換は出来ますけれど、総合的評価をしますと「URUーURU」という文字が世界で一番多用されることは間違いありません。
「寿司」「すし」は、もう今では「SUSHI」で世界語になっております。
こういった傾向がますます、多くなっていくように思います。
ローマ字に変換する元の言葉は、やまと言葉であります。
そういう点において、やまと言葉を多く知っておくことが大事になってくるかと思います。