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初めてのデート 白と黒のコントラスト 真っ白な あなたの歯 ピンクのルージュがまぶしく輝く 真っ白な あなたのセーター こちらを向いて 手を振るあなた 真っ黒な 僕のジャケット 真っ白なセーターがその中から覗く あなたのセーターに同化しようとして それを優しく受け入れるあなた 人ごみの中で 二人だけがリアル 白と黒のコントラストがリアルにする アパートの電話番号を内緒で教えてもらった健吾は、三日後に恐る恐る電話をした。 「渋谷の道玄坂に白鳥という喫茶店がありますが、会いませんか?」 断られたら、どうしようと不安な気持ちだったが、その後、最後まで、裕子は健吾の誘いを断った事はなかった。 いくら先約があっても、彼とのデートを最優先していた。 そんな彼女の気持ちを知らないで、健吾はデートの約束時間によく遅れた。 本来、思いやりのある青年だったが、寮生活の悪い影響を受けていたのだ。 大阪日吉学生寮と言って、大阪から東京の大学にやって来た三十人の学生を面倒みてくれる寮なのだが、「旅の恥は掻き捨て」的発想が強く、もともとそんなに悪い人間はいないし、悪になれる度胸もないのに、ちょっと度の過ぎたいたずらを集団でして、調子に乗っている臆病ガキの集まりだった。 そういう中で、特に女性経験においてのライバル意識は同学年の間で異常なほど燃やしていた。 女性を引っ掛けることを、「女を走る」と言い、女性にもてることが一番のステータスと思っていた連中が大半だったから、女性とデートしても、意識的に遅れるのが常識になっていた。 「待たせて帰ってしまうぐらいなら、もてる男にあらず」という実に幼稚な発想をする者が多かった。 健吾は、人との約束時間を守ることが常識だと、家庭で躾られていたのに、寮の雰囲気が、その意識を希薄にさせていった。 自分から誘っていながら遅れて、約束した場所の喫茶店に入ったら、裕子が白いタートルネックのセーターを着て彼の方に手を振った。 「よかった!」と安堵の気持ちが沸きあがった。 意識して遅れるつもりはなかったが、どしゃぶりの雨が降っていたために、電車に乗り遅れたのだ。 しかし、裕子は怒りもせず、健吾が同じ白のタートルネックのセーターの上に、流行りのベルベットの黒のスーツを着ていたのを見て感激していた。 「まるで、テレビ画面から出て来たスターみたいだわね」 彼女は、きっちり時間を守る女性だということを、そこで認識すべきだったが、寮生の悪い慣習にかなり染まっていた健吾だった。 どれぐらい、話をしただろうか。 時間の経過を忘れるぐらい、夢中で話していた。 「雨が止んだようね。駒沢公園に行ってみない?ボートの選手としてオリンピックに出たいんでしょう?あそこには体育大学があって、みんな厳しいトレーニングをしているのを見学出来るわよ」 健吾は、工学部の学生でありながら体育会のボート部に入っていた。 新入部員の頃から図抜けた体力を見せつけていたが、工学部の授業はさすがに厳しい。このまま続けていたら、試験の結果を待たずして、授業の欠席だけで留年してしまうと、担任の先生に脅かされて、一時ボート部の練習に行かず、退部すると申し入れしたことがあった。 しかし、あまりにも並はずれた怪物ぶりに、ボート部の部長が大学に交渉して、授業出席の免除を特別にもらった程の期待された部員だった。 そのことを聞いていた裕子は、体育大学に友達がいたので、健吾の為に案内しようと買って出てくれたのだ。 駒沢公園には、東京オリンピックの時に造られた競技場があって、その周辺で多くの大学のスポーツ部員が練習をしていた。 「どうだった?みんな凄い練習をしているでしょう?だけど健吾君には到底及ばないわね。毎朝早くから寮でもトレーニングをしているそうね。ボート部の練習だけでも大変なのに、それ以外に日課のトレーニングを欠かさずやっている健吾君に、先輩のみなさんも感心していたわよ」 駒沢公園から自由ヶ丘まで、二人は歩いて行くことにした。 「自由ヶ丘にファイブスポットというジャズの生演奏を聴かせてくれる店があるんです。行きませんか?」 健吾の方から誘ったのだ。 思った以上に時間がかかり、自由ヶ丘の駅の近くにある店に着く前に辺りは暗くなっていた。 住宅街を歩いていた二人の後ろから、怒鳴るような声がした。 「何だよう!いちゃいちゃして歩いて!」 健吾が後ろを振り向くと四人の不良学生が、こっちを見て笑っていた。 「健吾君、早く行きましょう!」 裕子は、姉のような口ぶりで健吾に急ぐよう促した。 彼は、「こんな奴ら四人ぐらい!」と平然と思っていたが、裕子の言葉に従った。 フアィブスポットに入って、席に落ちついたら、やっと安心したのか裕子が真面目な顔をして言った。 「健吾君は、あんな場面に出食わしても平気なのね。よほど自信があるの? だけど、わたしは喧嘩は嫌い」 サンドイッチをぱくつきながら健吾は頭を掻いて笑っていた。 そんな彼を見ながら、裕子は、「まだ幼さが残っている、かわいい少年みたい」 複雑な想いで笑っていたが、健吾が裕子の想いを察するには、あまりにも精神は未熟だった。 |