第三百十六話 人間社会だけがオス社会

グループ(組織)を構成して生活する生きものの社会にはオスのボスがいると、わたしたち人間は思っています。
ボス猿やボスライオンはオスです。
従って、
オスのボスで構成されるオス社会だと言うわけです。
だから、
人間社会もオス社会だと言うわけです。
しかし果たしてそうなのでしょうか。
グループ(組織)を構成しないで単独生活をする生きものの社会にも家族という最小単位のグループ(組織)があります。
トラや熊がその代表です。
彼らの家族構成の中にオスの存在はありません。
母親と子供だけの家族なのです。
オスの存在意義は種の提供だけで、種の提供が終われば、オスは離れて行き、子供を生んだ母親を中心の家族社会になり、やがて、子供がひとり立ちできた暁には、子供も離れて行きます。
これは、まさにメス社会です。
一見、オス社会に見える猿やライオンの社会も、よく観察すれば、メス社会であることに気づきます。
ボス猿やボスライオンだと決めつけているのは、オス社会を構成しているわたしたち人間だけであるのです。
ボスと思われるオスライオンは狩りは一切せず、メスライオンたちが協力して餌となる他の生きものの狩りをします。
ところが、最初に餌を食べるのはボスライオンと思われるオスライオンです。
だから、
わたしたち人間は、そのオスライオンがボスだと決めつけているのです。
更に、
ライオンのグループ(組織)には、オスはボスライオンと思われるオスライオン一頭しかいません。
子供のオスライオンはいますが、大人になったオスライオンはグループ(組織)から追放され、オス一頭だけのハーレムを構成して、他のメスライオンとの交尾を独占します。
だから、
わたしたち人間は、そのオスライオンがボスだと決めつけているのです。
そのオスライオンが食欲と性欲を独占しているからです。
ところが、わたしたち人間が見逃している点があります。
それは、ボスライオンと思われるオスライオンですが、そのボス権は世襲・相続されない点です。
猿の社会でも、ボス猿と思われるオス猿のボス権は世襲制ではなく、ボス争いに勝ったオスの持つ権利なのであって、ライオン社会でも同じです。
世襲制ではなく、実力制なのが、人間以外の生きものの社会の鉄則なのです。
何故でしょうか。
種の保存が彼らの唯一の目的だからです。
種を保存するためには、強い種が要るからです。
そのために、一頭のオスライオンに食欲と性欲の独占を許しているのです。
その代わりに、一頭のオスライオンは他の生きものからグループを守る責任を持たされます。
つまり、
外敵からグループを守ることが、ボスライオンと思われるオスライオンの役目なのです。
強い種の提供。
外敵からグループを守る役目。
この二つがボスライオンと思われるオスライオンの役目であって、グループのリーダー(ボス)では決してないのです。
グループをリードしているのは、メスライオンなのです。
つまり、
トラや熊と同じメス社会なのです。
若しも、オスライオンがボスならボス権は必ず自分の子供に譲ろうとしますが、彼らの社会では世襲制はありません。
結局の処、
オス社会であるとは、世襲制社会のことなのです。
メス社会には、世襲制の概念はありません。
差別・不条理・戦争を繰り返す人間社会だけが、オス社会である所以が世襲制にあるのです。
従って、
オス社会から脱却するということは、世襲制からの脱却に外ならないのです。