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第二章 世界の虚構と破滅への兆候 いつの時代も、人々は「この世は闇だ」「末世だ」と騒ぐ。 しかし、決して忘れてはならないことがある。それはすべてのものは発展と後退の繰り返しをするのが、宇宙の法則であることだ。 宇宙150億年、太陽系惑星46億年の宇宙は、発展と後退の繰り返しをしてきたのである。 人生80年は宇宙の歴史からすれば、ほんの一瞬のことである。人類にとって、宇宙の山と谷の周期は何万年、何十万年、それ以上だから、谷の時期にあたったら、人類は、それこそ闇の世であると感じるだろう。 人類文明も約2万年の周期で山と谷を繰り返してきた。 我々の文明は、少なくとも地球の山と谷の繰り返しの中でどの位置にあるのか。また今回の人類文明の山と谷の繰り返しの中で、現在はどの位置にあるのかを、客観的に判断しなければならない。 宇宙の発展・後退の周期、地球の発展・後退の周期を考えると、我々の宇宙である中心は太陽である。太陽は宇宙の歴史150億年の中で50億年前に誕生した星である。 星の誕生と死は、それぞれによって違うが、星の死はブラックホールになる程の重い星になった時から始まる。現在の太陽は、ブラックホールになるための重さの3分の1である。加速度が加わることを考慮しても、まだ太陽の死まで50億年はかかる。地球の生死はひとえに太陽の生死にかかっている。したがって太陽や地球の一生にとって今はちょうど折り返し点に当る。 折り返し点はちょうど山と谷の境界点であるから、状態としては0地点である。 つまり、それほど良くもないが、悪くもない状態が、我々が今、住む地球だと考えられる。 一方、人類文明2万年周期の中で、今の位置はどうなのか。この方が我々にとっては重要な要因である。 人類の歴史を語る最古の文献である聖書では、人類文明は千年単位の山と谷を繰り返すと書かれている。そしてイエスキリストが誕生する前と後で区分けする。 紀元前をB.C(Before Christ)と言い、紀元をA.D(Anno Domini)と言う。 今はAD2011年だ。Anno DominiとはIn the year of our Lord(我らが主の時代)のラテン語訳でLordとはまさに主イエスキリストのことを指す。 イエスキリストの年の、最初の千年が紀元10世紀までで山の時期、次の千年の紀元20世紀までが谷の時期だと言われて、20世紀末が谷から山へ変わる境界点なのだ。そうすると谷の底は紀元15世紀の辺りであり、20世紀から21世紀は世紀末どころか、これから山へと上昇していくと考えて然るべきである。 聖書を書き上げたのは一体誰なのか。 旧約聖書が最初に書かれたのは紀元前2世紀頃で「死海の書」の一部にあったイザヤ書である。その後1千年の時間を費やして複数の人間によって、紀元9世紀にヘブライ語で完成されたものである。そして現在の旧約聖書は紀元15世紀にヘブライ語で書かれたものだ。 また新約聖書が最初に書かれたのは紀元2世紀の初めで、イエスキリストが十字架に架けられた紀元33年、イスラエルがローマ帝国に滅ぼされた紀元70年から、数十年後である。その中心を成すものが「パウロ書簡」であり、完全に近い形で残っておるのは、ギリシャ語の写本で、紀元4世紀の「シナイ写本」「バチカン写本」などがあり、紀元1516年に初めて印刷された。 旧約聖書が編纂された紀元前2世紀と、日本の正史「記紀」が編纂された紀元8世紀との間におよそ1千年のズレがある。 聖書での創世記は、記紀の天孫降臨の話であり、次のモーゼの出エジプト記は紀元前1500年で、神武天皇即位の皇紀元年は紀元前660年である。 客観的判断に委ねれば、両方とも捏造の歴史書だ。 特に、聖書に書かれてあることには、これからの世界についての罠が嵌め込まれている。 現在、世界で起こっている現象は、すべて聖書に書かれた予言と言うよりも計画書に基づいたものであることを、世界の人々は気づいていない。 人間世界は、いつの世も虚構で埋めつくされていることに、我々は、いい加減、目を醒まさなければならない。 地球の歴史上では、現在は決して悪い時期ではない。人間自身が敢えて悪くしようとしている。 地球意識アーシーは一部の人間が捏造(でっちあげ)た世界の虚構を、鬼神四郎を通じて世界の人々に示そうとしている。 四郎は高野山で一週間逗留した。 マイヤーと賢治は先に下山したが、四郎は体に変調を訴え、京屋旅館で療養することにしたのだ。 京子は、付きっきりで四郎の面倒を見た。 同じ部屋で布団を並べて、夜中じゅう、寝ずに四郎を看病した。 夜中に、悪夢を見ているのか、魘され、時たま叫ぶ声はまったく意味不明の内容であった。京子はただ、汗を拭いてやるぐらいしか出来ないのだが、目を離すわけにはいかないほどの状態だったのだ。 ちょうど一週間経った時、四郎は意識を回復して、京子が傍でずっと看病していたことを知って感激した。 しかし、四郎は胸の中で、ひたひたと忍び寄ってくる、暗闇の中の巨大な波を感じていた。そして、この巨大な波の正体を、薄々察していた。マイヤーが高野山を離れるときに京子と女将さんにメッセージを残しておいたのだ。 「世界は、いよいよこれから最終段階に入っていきます。黙示録そのままの様相が展開するでしょう。その中で、日本は世界の悲喜劇の主役を演じることになります。そして主役の中から救世主が出現します。それが誰かは言うべくもないことです。ただ、これから起こることは、人類が一度も経験したことのない想像を絶するものです。デビル様でも、これを食い止めることは不可能です。 デビル様に、よく言っておいて下さい。 デビル様の出番は、起こるべきことがすべて起こってからであることを。そのタイミングを間違えると、デビル様といえども弾き飛ばされてしまいます。何故なら、この事を起こさせるのは、地球意識アーシーそのものであるからです」 マイヤーの言っている意味を計りかねていた二人だが、言われた通り、正確に四郎に伝えた。 「彼が、そんなことを言っていましたか。実は、この一週間、夢の中で一つの物語が毎夜続いていました。彼が言っている、想像を絶する事が起こる、というのは夢の中で起こっていたことだと思います」 四郎が、深刻な顔をして言った。 「どんなことが起きても、大したことないわよ。だけど四郎ちゃんが巻き込まれることは、何が何でも避けないと駄目よ。マイヤーさんが言ってることを守ってよ!」 京子も深刻な顔をして言った。 しかし、今の四郎には、京子の想いを汲み取ってやれる余裕はなかった。 「どんなことが起こるか、わたしには分からないけど。暫くはここにいたらどう?」 女将さんも四郎のことを心配していた。 「そうよ、出番はまだだとマイヤーさんが言ってたわ。それまでは、ここにじっといるべきよ!」 京子は懇願するような表情で四郎に言った。 夢の中で起こっていたことを考えると、じっとしているわけにはいかない。しかし、四郎が出ていったからと言って、どうにもならないことも分かっていた。 「人里離れた場所の方が嫌なものを見ないで済むから、そうさせて頂きます」 四郎の表情をじっと眺めていた二人は、顔を合わせながら複雑な表情をした。 2011年9月12日、月曜日。運命の朝が、何事もなく静かに明けた。 その日も、いつもの月曜日と同じで午前中の東京は、残暑の気怠い雰囲気が漂っていたが、午後になるとやっと眠気が醒めたようで人の動きも普段のペースに戻り、週明けの初日も、無事終わり、みんなが帰路に着こうとしていた。 午後6時35分、運命の幕は切って落とされた。 ロンドンの為替市場で異変が起きた。 莫大な円の空買いが入り、1ドル120円50銭で始まった市場は、あっという間に100円を割ってしまった。1日で20円も円高になるという前代未聞の出来事である。 日本中のテレビで緊急ニュースが報じられた。政府・日銀も、東京市場は閉まっているから、ただ呆然としていた。 6時間後にニューヨーク市場でもっと恐ろしい事が起こることを予想する余裕もなかった。 日本の夜12時、ニューヨーク午前10時、ロンドン市場を遥かに上回る円の空買いが始まった。 1ドル101円台で綱引きをしていたロンドン市場が閉じた瞬間、ニューヨークで一気に30円以上の円高になり、1ドル60円台に突入した。 1日でドルが半値になったのだ。 日本の自動車トップメーカーは1ドル1円の変化で為替損益が百億円に達するから、60円の円高になると6千億円の為替損になる。これは1年汗水たらして稼いだ利益が一瞬にして消えてしまうのだ。 日本の貿易黒字、すなわちドル保有高の価値が半減した結果出る影響の恐ろしさを、日本国民が認識するには、それほどの時間が掛からなかった。 日本はアメリカに次ぐ大輸入国でもある。輸出産業の打撃は計り知れないが、反面、輸入産業の恩恵も大きいと高を括っていた政府は、エネルギー、食料をほとんど輸入に依存していたことの重大さを思い知らされた。 アメリカの穀物メジャーが中心になって、日本への米、小麦を中心としたあらゆる食料の輸出をストップすると通告してきたのだ。 それに呼応するかのように、アジア・中東諸国からも石油、食料の輸出をストップすると連絡してきた。 特に中国からの輸入依存は大きい。 日本企業の中国への工場進出は活発で、現地に数え切れないほどの、日本企業独自の工場があったが、その工場からの日本への出荷も止められたのだ。 現地工場を保有する日本企業および政府が中国政府に抗議したが、まったく暖簾に腕押しで返事すらしてこない。 戦後の日本は輸出に依存して経済力をつけてきた。しかし経済は生き物で、人間の体にある自然治癒力と同じ力を持っている。 日本だけが輸出ばかりで輸入をしないアンバランスを続けていると世界の経済メカニズムは自然治癒力を発揮しだす。結局、大輸出国は大輸入国になるのが鉄則であることを、日本政府も行政も財界も気づかなかった。 日本株式会社であれば、余計、この鉄則ははっきり出てくる。 日本国民も、自分の国が大輸出国であることは認識していたが、大輸入国であることに対する認識は希薄であった。 貿易において、大事なのは輸出ではなくて輸入であるのが、国際貿易論の常識である。比較優位論と相対効果論が貿易の"いろは"である。 輸出によって外貨を稼ぐことに腐心してきた日本は、この原理を知らなかった。 戦争が勃発する原因は、ほとんど輸入をストップされることから始まる。要するに兵糧攻めだ。 今流に言えば、アメリカ十八番の「経済制裁」である。 日本がアメリカに勝つ見込みのない戦争を始めたのも、石油の輸入をストップされた、いわゆる経済制裁が発端であった。 デビルによって、憲法改正が為されるまで、日本は軍隊を持てなかった。だからアメリカを中心に世界の国は日本に輸出してくれていたのだが、日本が軍隊を持つと兵糧攻めの効果が出てくることになる。 当然、食扶持を断たれると、人間生きていくためには力づくでも取りにいく。 『しまった!』と四郎は思った。 『軍隊を持つということは、真の独立国家になることであり、真の独立国家とは、自分で食扶持を賄うことの出来る国家であることだ。そこを押さえていなかった』 輸出立国は、自給できても、敢えて輸入しなければならないのが貿易のルールだ。そして自給力を喪失していく。じわじわと自給力を失っていたことに気づかなかった国家の失政である。 結局、敗戦後の日本にまた振りもどされたのだ。 デビルは自分の浅はかさに失望した。 その時、マイヤーから電話が入った。 「黙示録の第一の天使がラッパを吹きましたね」 |