Chapter 12 齢の取り方

若い頃に比べて、高齢になれば1才歳を取る意味合いは、非常に重いものとなっていきます。
何故かと申しますと、
まず、1才つまり一年という時間の中身の密度が非常に濃くなるからです。無駄が許されないのです。
それと、失った時間を取り返すのは不可能ですが、穴埋めする労力が若い頃には少なくて済むのですが、高齢になると大変大きなものになります。
そして、これが一番重要なことですが、死に近づくと時を刻む間隔が短くなることです。
この三つの要因を分かり易く、比喩してみますと、一本の1メートルの縄の片方に火を点けて、もう一方を持ってぐるぐる回すのを想像してみてください。
縄の先の火が円を描きます。
そしてどんどん火が縄を燃やしていきますから、縄の長さが短くなっていきます。
縄の長さが短くなれば、円の大きさは小さくなっていきます。
円が小さくなれば円を描く速度はどんどん速くなっていきます。
そして手に持っている部分まで燃えると、円を描くことが出来なくなって、最後は火さえも消えてしまいます。
これが、人間が生まれた時から死ぬまでの一生を、時間とその感覚の変化を喩えたものです。
地球が太陽の周りを一回転すると一年が過ぎます。
同じように縄の先の火が一回転すると、その人の人生の一年が過ぎたことになります。
最初は中心の手から遠く離れた処で縄の火がゆっくりと動いています。
円の大きさは半径1メートルの大きな円ですから、その円の面積は3.14平方メートル−こんなことはどうでもいいことなのですが念のため−あって、その円全体が、その時のその人の四次元世界なのです。
そしてその円の中で、人生を送っておるわけで、あっちが駄目ならこっちがあると、円の中でも出来事の密度が薄いのです。
それが、歳を取って燃えている縄の長さが短くなると円の大きさがどんどん小さくなって、その小さい円の中でいろいろな出来事がびっしり埋まっていくのです。
しかもその出来事というのは、円の回転速度に比例して多くなっていくから、ますます密度は濃くなっていく。
また、縄の火力が弱くなっても、手は熱くないし、回転もゆったりとしているので、火をもう一度点ける余裕があります。すなわち失った時間を穴埋めする余裕がまだあります。
円が小さくなって回転速度が速くなると、新しい火を点け足すことが困難になります。
そして、円が小さく、速く回転するから、一周の時間が同じであるから、時間の間隔が短くなる。
これが、人間が歳を取るイメージであります。
だから高齢になればなるほど、せわしなくなる。
こういう状態の中で、楽しく生きるにはどうしたらいいでしょうか。
自分はどこにいるのでしょうか?
そうです、縄の片方を持っている手こそ、あなたそのものなのです。
手は熱くなってくる、手は速く回さなければならない。
手を離したら死がやって来たことです。
我慢出来ずに、いつ手を離すか、そればかり気になるでしょう。
そのプレッシャーは極大化されていきます。
それなら、いつ手を離すかを楽しみにしていることです。
今か今かと、恍惚状態になる一歩手前で楽しむことです。
それには、「ええい!もういってしまえ」のような短気を起こさず、「まだまだ、まだある、まだまだ」とじっくり楽しむことです。