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Chapter 2 人間が超えることが出来ないもの 時間が神だと申しましたが、時間はまた悪魔でもあることを忘れないで欲しいと思います。 神と悪魔は一心同体である。 これを外したら、すべては錯覚の上の楼閣になります。 わたしが宗教を否定するのも、この点に置いて宗教は明確に出来ないからであります。 「神が全知全能であるなら、何故人間を苦しめる悪魔が存在するのか?」の問いに、正確に答えることが出来る宗教はありません。 「悪魔は、神が人間に与えた試練の道具で、試練を乗り越えるために悪魔を敢えて創造した」などとふざけたことを嘯く宗教は論外です。 全知全能であるなら、試練などとややこしいことは不要です。 何の為に、試練が必要なのでしょうか? 人間が不完全だから? 「そんな不完全な人間を創造したのは、全知全能のあんたではなかったのか? いい加減にしろ!」と神に言いたくなります。 神という言葉自体が人間の造ったものですから、仮に神なるものが存在したとしても、それは神なんて知らないと言うでしょう。 人間とはかくなるものである。それに対して神とはかくなるものである。 そこまでしか言えないと思います。 だから、わたしは人間と神なるものを比較するなら、人間には出来ない事、考えも及ばない事、人間には無いもの・・・が神なるものと言うしかないのです。 人間があらゆる生物の中で知能が最も発達したものであることは、脳を観察するとわかります。 人間の大脳は、新皮質と古皮質の二重構造になっており、それ以外の動物は霊長類の一部を除いて古皮質だけしかありません。 古皮質は、条件反射的、本能的と言いますか、それぞれ固有の動物が、その進化の長い過程の間で学習した価値ある情報を判断する機能を持つもので、産まれたての赤ん坊でも何をすべきかを知っているのは、価値あるものが何かを、古皮質は赤ん坊に教えているのです。 一方、新皮質は古皮質を通して入って来た価値ある情報を、より良くするためにはどうしたらいいのかを考える機能を持っています。いわゆる知力はこの新皮質によって発揮されるのです。 どうやら、より高度な機能が必要になると大脳皮質の層が増えていくようだと考えられます。 そこで、人間にとって超えることの出来ないものは何かという問題になってくるわけです。 アインシュタインが言った、「光の速度を超えるものは存在しない」ここにヒントがありそうです。 速度という概念は時間をベースにしていることはご承知でしょうか。 単位時間当たりどれだけの距離を移動出来るかが速度です。 従って時間の概念がなければ速度というものもありません。 数学に微分・積分という学問がありますが、これは一体何をする学問かといいますと、三次元立体物すなわち空間(スペース)を時間で微細に分けたり、積み分けたりすることによって、その空間の特性を分析するのがその目的なのです。 何故そんなことをする必要があるかと言いますと、我々が住んでいる宇宙というものは、空間プラス時間で構成されているものでして、それを時空の世界、四次元の世界と言っておるのですが、我々は、その時空の世界の、ある限られた部分に存在していて、それは時間というナイフで切られた断面の世界であるのです。 例えば、今わたしは2002年5月23日午前4時15分、ベルリンのCharlotten-straβe通りにあるフォーシーズンズというホテルの524号室の、ベッドの上で執筆しているのですが、これから後45分ほどで書き終えて、日課である運動の為に、すぐ近くにあるFriedrich-straβe通りを北上して、Friedrich-straβe駅を越したところにある運河沿いに歩くことにしています。 そうしますと、2002年5月23日午前4時16分−さきほどより1分ほど経過したでしょうから−という時間のナイフで、新田論という人間の実在する時空間を切りますと、ホテルのベッドで執筆している新田論が出現するわけで、これを今−わたしは出来ませんが−時間というナイフが午前5時−あと44分後のことですが−で切りますと、ベッド上の新田論からFriedrich-straβe駅の横の運河沿いを歩いておる新田論が出現するのです。 一方、アメリカのブッシュ大統領が昨日訪独してベルリンのホテル・アドロンというホテルに泊まっていますが、同じ時間のナイフでジョージ・ブッシュの実在する時空間を切りますと、ホテル・アドロンの部屋で寝ているアメリカ大統領が出現するのです。 時空の世界では同時出現出来るわけです。 しかし我々は空間(スペース)で生きており、時間の流れに支配されていますから、時間を早めたり、戻したり出来ないのです。 すなわち微分・積分というのは、宇宙を構成している時空という四次元の世界で、時間という神に支配されながら三次元空間に実在する我々の立場認識をさせてくれる貴重な学問であるのです。 この微分・積分の基本が時間なのです。 ニュートンがこの学問を確立させたのですが、何故この学問を考案したのかと言いますと、その後彼の偉大な発見となる、熱力学第一・第二の法則、慣性の法則、作用反作用の法則はみんなこの学問を基礎にして発見したのです。 それほどに、時間というものは我々の世界では推し量ることの出来ない要因であるのです。 |