Chapter 44 時差の発生原因

Chapter43では、時間の始まりについてお話し致しました。
宇宙ではビッグバンが時間の始まりであり、インフレーション現象が空間の始まりであって、その間に10の11乗分の1秒の時差があると申しました。
それが人間の場合は、時間の始まりが、母親の子宮で受精された時であり、空間の始まりが母親の胎内から産み落とされた時で、その間に十月十日の時差があるとも申しました。
従って、人間の記憶は本来、時間の始まった受精の時点から始まらなければならないはずであります。
少なくとも、時間が始まった十月十日後の空間の始まりである出産時点でなくてはなりません。
しかし、ほとんどの人間は5才乃至7才ぐらいからしか記憶は始まりません。
これは一体如何なる理由からでしょうか。
幼児体験というのがあります。
人間の脳というものは、コンピュータで言えば、CPUである演算処理装置と記憶装置がもっと精妙にできたものでありまして、CPUである演算処理装置はそのままではただの電気回路であって、何の働きもしませんが、そこに記憶装置とCPUとの間を橋渡しするレジスターメモリーやキャッシュメモリーなるものがあって、そこでCPUの中にある多くの回路を使って計算させるプログラムが内蔵されて初めてコンピュータの仕事をするのです。
そしてそのプログラムを最終的にCPUを使って実施させるには、記憶装置にプログラムをインプットしてやらなければなりません。
人間の脳というものは、二種類の記憶装置があって、一つは地球上に生命体が誕生した時、すなわち単細胞生物が誕生したわけですが、その一つの細胞の中に一個のDNAという記憶情報が組み込まれ、その後何十億年間、その最初の単細胞DNAから徐々に複数の細胞に増殖していき、哺乳動物である人間になるまでに数十兆の細胞の中に約30億ものDNAが配置されてきたのです。
もう一つは、母親の胎内から産まれ落ちた時から、母親を皮きりに外部からインプットされた記憶を留めている装置があります。
実はこの外部記憶がプログラムであるわけです。
DNAはあくまで生命体、いわゆる動物本能としての記憶であるのに対して、外部記憶は知的情報およびそのプログラムであるのです。
従って、母親の胎内から産まれ落ちても、馬には馬の本能としてのDNAが機能し、人間には人間の本能としてのDNAの機能は発揮されますが、知的活動の基になる外部記憶を蓄積するには数年掛かるわけです。
幼児体験というのは、本能活動をする際にかなり強烈な外部情報をインプットされることを言うのです。
無意識状態の中で外部情報をインプットされてしまうのです。
これは、数十億年の生命体のDNA情報と同じレベルの影響力を持っていますので、その人間に一生付きまとうことになるのです。
この二つの記憶装置が、他の動物には無いのに、人間だけにある結果、本能活動だけをしている状態の記憶が、外部情報の記憶によって消されてしまうのです。
それがちょうど5才から7才あたりなのです。
従って、時間の始まりの記憶が、空間の始まりの時だとするとオギャーと産まれた時から時が刻み始めるはずなのですが、人間だけは特別な能力つまり知的能力があるが故に、外部情報という知的情報がある程度インプットされるまでは、まったく記憶のない状態で留まるわけです。
他の動物なら、産まれてすぐに自立活動を開始して自己防衛本能も備えているのですが、人間だけは全く無防備状態に置かれているのです。
その期間が5才から7才であるわけです。
平たく言えば、人間以外の動物は、母親から産み落とされた時点から自立活動を開始するのですが、人間だけは5年から7年、親の庇護の下におらなければ生き残ってゆけないのです。
だから5才から7才ぐらいまでの記憶が消えてしまっているのです。
これも自己防衛本能のある一面であるのかもしれません。