Chapter 10 あなたは一枚のコイン

我々の宇宙の曲率がプラスである可能性が最も強くなったと前に申しました。
宇宙は永遠に膨張するのではなく、ある時(多分100億年から150億年後ぐらいでしょう)膨張から収縮に反転するというわけですが、今までの時間の矢の方向が膨張から逆に収縮すると、他の時間の矢、つまりエントロピーの時間の矢と人間の心理的な時間の矢も多分反転するだろうと思われます。
もちろん、その時期まで人間が生き残っているかどうかわからないし、科学者の間では、人類や他の生命体は、宇宙が膨張している時期だけしか生存できないだろうと言っているようですから、確認する術はありませんが、概念の世界では、時間の矢も反転するはずです。
エネルギーが無秩序な状態から秩序ある状態へ、未来から過去へと時間の矢も反転する中で人間が生きて行くとなると一体どんな人生になるでしょうか。
宇宙には物質に対して必ず反物質があります。
我々の宇宙は、その始まりの頃に正物質の粒子と反物質の粒子が衝突して対消滅した結果、一つだけ残った正物質が、我々の宇宙を形成したので、反物質の存在しない宇宙だという説があります。
しかし、反物質の存在は立証されています。
そうしますと、ここからはわたしの推測でありますが、その時に存在する人間も、我々正物質の人間に対する反物質の人間ではないかと思います。
形はまったく我々と変わらないのですから、見た目は同じ人間であります。
そこで、夢の中での出来事を考えてみますと、どうやら夢の中では、時間は過去から未来への一方通行だけではなく、未来から過去への通行もある両方通行になっているように思われます。
実は、ほんの数十分前に夢を見たので、まだ憶えているのですが、現在55才のわたしが登場して、見たこともないのですが、本人は宮本武蔵だと名乗っているのです。彼がわたしの前で、「えい、やああ!」と叫んで、数メートル飛びあがった。
そうしますと、55才のわたしが、急に7才の頃のわたしに変わって、その男と一緒に楽しそうに飛んでいるのです。その時、宮本武蔵と名乗ったその男も、わたしと同じ7才くらいの少年に変わって、二人とも顔は最初の時と同じなのですが、体は烏のような黒い羽を開いて、大きな家の黒い瓦の屋根の上を飛んでいるのです。
その黒い瓦の屋根の家が、今はもうない、わたしが7才の頃の実家なのです。
そこで目が醒めました。
どうも心理的な時間の矢が、未来から過去への逆方向の夢であったと思われます。
しかも、人間は一日中夢を見ているとも以前申しました。
ひょっとしたら、実在する我々人間は、正物質と反物質両方であるかもしれません。
我々の宇宙とは別の宇宙があるかもしれない、そしてそこは反物質の世界だとか、ブラックホールとホワイトホールをつなぐワームホールがタイムトンネルだとか、ベビーユニバースだとか科学者の間でいろいろな説があるようですが、わたしは科学者ではありませんので、荒唐無稽な発想かもしれませんが、色即是空・空即是色の色と空が正物質の宇宙と反物質の宇宙ではないかと思うのです。
つまり正物質の世界と反物質の世界は、一つのもので、コインの裏表の関係にしか過ぎない。
どちらから見るかは、個人の好き嫌いで決定される。
あの世から見るか、この世から見るか、どちらも可能である。
生と死の問題も、生と死は別ものではなく、同じ一枚のコインであるように思えるのです。
あなたは、自分というコインのどちらの面を見ているでしょうか?