Chapter 31 Time is neither Money nor God

Time is Money(時は金なり) という諺があります。
人間社会にMoneyつまりお金が誕生してから、およそ2千7百年経ちます。
中国の秦の時代の古分銭というのがお金の最初でありますが、Time is Moneyと言われ出したのは、近代社会になってからであります。
また中世においても、貨幣価値の重みは古代に比べて大きくはなったものの、やはり中世の君主国家においては、貨幣の力より権力の方が遥かに大きく、貨幣の価値を決める支配者に勝ることは出来ませんでした。
しかし、イギリスで起こった資本主義社会制度から一挙にお金の価値が大きくなり、産業革命による生産形態の変化がもたらした効率化が、時間の価値を高め、Time is Moneyという諺が生まれたのであります。
しかし、よく考えてみれば、この諺は時間が大事だと言っているのであって、お金が大事だと言っているのではありません。
たまたま、お金の価値が人間社会において極めて高くなったから、時間はお金と同じぐらい大切だと言っているのです。
従って、お金よりも、権力の方が価値が高い時代において、時間の重要さが認識されていたら、Time is Moneyではなく Time is Power となっていたはずであります。
Time is Moneyの精神は、やはり20世紀という科学技術が飛躍的に進歩した時代の申し子であったと思います。
そして、20世紀末に世界各地で起こったバブルが、Time is Moneyの精神のピークであり、そのバブルの破裂により、今、その精神が瓦礫のようにがたがたと崩れている真っ只中に我々は生きているのであります。
朝の日の出前が一番真っ暗闇であるように、現在の世界が真っ暗闇の極みでありますから、Time is Moneyを地で行く拝金主義者達が真っ暗闇の中を闊歩しておりますが、間もなく21世紀の新しい太陽がその姿を現すと同時に、Time is Moneyの拝金主義者達は必然的に消えてゆく運命にあると思います。
わたしは、「富裕論」という本の中で、21世紀の豊かさの基準はお金の多少ではなく、徳の多少になると申しました。
そうしますと、Time is Moneyではなく、Time is Virtue となるのですが、Virtueつまり徳とは神に近い心と言ってもいいでしょう。
20世紀の人間は、Time is Moneyの時代ですから自分の損得ばかりを考えて行動してきました。
しかし、徳とは他人の為に何かを為す能力のことで、それは神が存在するなら、神の心そのものと言ってもいいかも知れません。
それでは21世紀は、Time is Godの時代となるわけです。
しかし、わたしのこの本のタイトルは、God is Timeであります。
「同じことじゃないか」と言われるかも知れませんが、とんでもないことです。
「Time is God」と、「God is Time」では意味が全く違うのであります。
Time is Powerの時代からTime is Moneyの時代になったのが中世から近代でありますが、近代においても国家権力あってのお金であり、そういう観点からすれば近代もTime is Powerの時代だと考えられ、確かに20世紀に入るまでの欧米帝国主義覇権国家が世界を席捲していた時代はそうであったと思います。
しかし、フランス革命に端を発して、起こった20世紀のロシア革命、そして第一次世界大戦、世界大恐慌、第二次世界大戦・・・そして湾岸戦争をよくよく検証して見ますと、Time is Powerの国家権力が主人公のように見えますが、実際はTime is Moneyの金力が演出者であったように思えてなりません。
それが今、かつての恐竜時代と同じように、強者必滅の真理に基づいて、金力にものを言わせて来た連中が、自分達のエントロピーの大きさに押し潰されようとしているのです。
人類の歴史は、Time is PowerからTime is Money、そして21世紀に入って、Time is God(Virtue)の時代になるであろうし、またならなければ人類文明の進化はないでしょう。
しかし、Time is God(Virtue)は人類の歴史の一頁であって、God is Timeは宇宙150億年の真理であると、わたしは言いたいのであります。
従って、21世紀は心の時代であるなどと標榜されていますが、それはTime is God(Virtue)という意味であることをしっかりと認識しておかないと、またまたTime is Moneyの時代に、Money is God という拝金主義に陥ったと同じ羽目になりかねない危険性を孕んでいるのです。
何故こういうことを言うかと申しますと、人間とは余ほど弱い生き物であるようで、常に何かに依存しておらないと生きてゆけない。そしてその依存する最大の対象が神であり、Time is God(Virtue)の時代になると、今まで、
「太陽が神だ」、「自然が神だ」、「先祖が神だ」、「エホバが神だ」、「アラーが神だ」と言ってきた調子で、「時間が神だ」と盲信しかねないことに、予め警鐘しておきたいからであります。
God is Timeは宇宙150億年を貫く真理であり、人間だけの為の神の概念ではないことを言っておきたいのです。