第十章  旧交のような新交

永井刑事が飛行機で東京からやって来た。
伊丹空港に迎えに行った隆二は、恋人を迎えにいくような気分だった。
永井刑事はそれほどに強烈な磁力を持っている珍しい警官だ。
伊丹空港の到着口で待っていると、永井刑事の姿が遠くに見えた。
偶然いま人気絶頂のタレントが永井刑事の横を歩いていたものだから、一般の視線が自然に彼の方にもいく。
永井刑事の方が明らかに見栄えがする。
人気タレントを到着口で待ち受けているミーハー連中がひそひそと話しをしている。
「あの横のかっこええ人、誰?」
「見たこともないタレントやな・・・。そやけどあっちの方がかっこええな!」
二人が並んで出て来たので、隆二は思い切り大きい声で叫んだ。
「永井刑事、おつとめご苦労さまです!」
ミーハー連中は仰天していた。
「ポリ公やで。それにしてもかっこええポリ公やな!」
後ずさりしながら言っている。
「阪本刑事も、ご苦労さまです!」
永井刑事も冗談で大きな声を出して言った。
「こっちのポリ公は、もうひとつやな・・・。まあ並や!」
隆二は総合商社で海外を飛び歩いた国際ビジネスマンのプライドを持っていただけに、カチンと来たが、仕方ないとも思った。
「やめて下さいよ、刑事さん」と頭を抱えて言う隆二。
「すみません」と永井刑事は頭を下げた。
駐車場まで歩いていく途中、永井刑事は新しい情報を隆二に伝えた。
「どうやら、この一連の事件は一つの会社だけの問題ではなさそうですね。会社そのものには、ほとんど関係ない事件のようです」
意味を測りかねている隆二に、それ以上話さずに隆二の車に乗り込んだ永井刑事は、しばらく黙って目をつぶっていた。
「宗教は、恐ろしいものですね!」
やっと口を開いたら、予想もつかない話だ。
「宗教に関係あるんですか?」と訊ねてみる。
「特にキリスト教というのは、どうして排他性が強いのですかね」
まだ隆二には判らない。
「まあ今晩は食事でもして、ゆっくり話しましょう!」
ロイヤルホテルに予約していた刑事がフロントにチェックインに行く。
「永井様。ようこそおいでいらっしゃいました」
支配人が丁重に挨拶している。
「一体何者なんだ!この永井刑事というのは・・・」
訝しげな表情の隆二に、「下で天婦羅でも食べましょう」と言って、永井刑事は荷物をポータに預けて地下に降りて行った。