第十九章  逮捕状

隆二は、伊丹空港からロイヤルホテルに向かう車の中で、里見専務のことを永井刑事に話した。
静かに聞いていた永井刑事が問い返してきた。
「殺された山科専務と里見専務の共通点はないですか?」
隆二は思い出した。
『二人は世間では評判のよくない新興宗教の夫婦揃っての信者だ!』
里見専務の夫人が入信したのがきっかけで、それに引っ張られるように山科夫人も入信し、やがて山科も入信したらしい。
里見が将来を託そうとしている山科と夫婦付き合いをしていたからだ。
「永井さんが、以前言っておられた宗教が絡んでいるというのは、この教団のことですか?」
「そうです!」
永井は断言した。
「今回の殺人犯人は里見専務です。共犯者もいるはずで、アリバイ工作のために協力しています。里見専務は昨日、大阪にいたでしょう?」
『何でもお見通しだ!』
隆二は思った。
「しかし、昨日は東京に新幹線で来ていたはずです」
「しかし、今日、会社の人間に確かめたら、昨日も大阪にいたと言ってましたよ」
「秘書に確かめて下さい」
永井刑事から初めて命令口調で言われ、その迫力に圧倒されて、すぐに携帯電話で野田にコンタクトした。
「おい。山科専務が昨日、東京で殺された」
野田は動揺した様子だったが、趣旨を説明して秘書を電話口に呼んでもらった。
「昨日、里見専務は一日中会社におられましたか?」
隆二は丁寧に質問した。
「はい、おられました」
「何度か、顔を会わされましたか?」
「いいえ。朝9時に、“今日は部屋で一日中重要な書類を作製するから邪魔をしないでくれ、お茶も食事も要らない!”とおっしゃっていました」
「それじゃ、朝9時以後全然顔を会わせていないんですね?」
「はい、そうですが。でも夕方5時過ぎに部屋からわたしのところへ電話をくださって、“もう今日は帰っていい”と言われましたので、顔も見ずに失礼しました」
「わかりました、ありがとう」
隆二が電話を切ろうとすると、横から永井刑事が言った。
「今、里見専務は部屋にいるか訊いて下さい!」
「ああ、もしもし。専務は今、部屋におられますか?」
秘書に訊く。
「はい、今日も一日部屋におられます」
永井刑事に相槌を打つと、彼は指を下に向けて言った。
「今から、トーホー商事の里見専務のところへ行きましょう」
胸から封筒を出して、中に入っている一枚の書類を隆二に見せた。
それを見た隆二はびっくりした。
里見に対する逮捕状だった。