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第六十四章 実体験 翌日、ふたりはマイケルと一緒にホームレスというより Beggar(乞食)の実地体験をすることになった。 マイケルがいつも仕事場にしている、トロピカーナ通りと15号線の交差点はあまりにも車の数が多いので、少し西にあるディケーター通りとフラミンゴ通りとが交差するところに行くことにした。 通称ストリップと呼ばれているラスベガス通りは南北に走り、トロピカーナ通り、フラミンゴ通りは東西に走るメイン道路だ、そしてその西側にあるのがディケーター通りだ。 この四つの通りに囲まれている地域が一番の繁華街だ。 交差点に立つ前に、看板を作らなければならない。 衣裳も托鉢の時に使った僧侶の着物と編み笠をかぶった。 そして看板は、一般には、「Homeless Help Food GOD bless you」と書いているが、日本人だけに工夫してみた。「I am a Japanese Homeless. Would you give me a favor for anything else than food. 南無阿弥陀仏」と書いた。 それを胸にぶらさげて止まっている車の側を合掌してご老体と五郎は歩いた。 交差点で止まっていた車から、窓を開けて、「Hey! Japanese guys. What that mean?(はい、そこの日本人、何て書いてるんだ?)」と話しかけてきた。 「It says Namuamidabutu. you've got what I mean?(南無阿弥陀仏と言うんだ。意味が分かるか?)」 「Namueimidebu Uhh?What 's that?(なんだ、それは?)」と頭をかしげている。 ご老体は、合掌してその運転手の横に立ってお辞儀をすると、びっくりしてポケットから100ドル札をご老体の持っているお椀に入れた。 ご老体もびっくりして100ドル札を、その男に確認のために見せたら、「Oh, no! I've got a mistake, I'm gonna getting you ten bucks. Get back!(なんてこった、俺は10ドルのつもりだったのに、くそ!)」と叫んだが、ご老体は意味が分からないから、100ドル札を胸に入れて「Thank You」と言った。 そのとき信号が青になって、後ろからクラクションを鳴らされた男は、くやしそうに、 「Fucking Japanese homeless! Shit!(この日本人野郎!)」と手を上げて叫びながら行ってしまった。 「さすが、アメリカ人は金持ちだなあ。100ドルもくれたよ」と喜んでいたら、五郎とマイケルが笑いながら、ご老体の手をつかんで「You've Got it!(やった!やった!)」と言ってはしゃいでいた。 ふたりの衣裳と看板の日本語が受けたのか、一日で300ドル以上のお金をもらった二人が、マイケルの「Amazing!(すごい!)」と言って信じられない顔をしながら喜んでいる姿を見て、「アメリカへ来てよかったなあ」と言うご老体に、五郎は笑いながら頷いた。 |