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第七十二章 若者の世界の変化 本来、若者の良さは怖さ知らずのところだ。大人は、すぐに先読みしてしまって、安全さを優先する。 ところが、今は若者の方が先読みする。情報化社会になって情報が若者の方に多く集まって、大人の経験を上回る知識を得ているからだ。ところが今の情報は、昔の情報と違ってプラスチック情報だ。生きた情報ではなくて、つくられた情報だから、必ず表と裏があって、それを見抜く経験がない。だから情報を利用するのではなく、情報に利用されていることが分かっていない。先読みはみんな、情報提供者の思う壷なのだ。 プラスチック情報提供者の最大の手先がマスコミだ。現代の精神伝染病の一番悪質な病原菌がマスコミだ。しかし考えてみれば皮肉なもので、マスコミで病原菌をまき散らしている者が、家に帰れば平凡なサラリーマン家庭を持っており、自分の家族も、伝染していることに気がつかない、実に哀れな連中だ。 その証拠に、上原での新しい道場に来る若者の親たちは、サラリーマンが大半で、その中でもマスコミと金融業界のサラリーマンが断然多い。 そういった親を持つ若者は10代後半から20代前半で、親たちの年齢は40代後半から50代前半という、一番ストレスの多い世代だ。 そこに相関関係がある。子供は親が思っている以上に、親のことをよく観察している。 親が、外でどんなことをやっているかよく分かっているのだ。マスコミ界は今や、情報の質など追求していない。購読者や視聴率を上げることにやっきになっているだけでおよそジャーナリストとしての誇りのかけらもない。質の悪い情報とは、嘘の情報つまり、彼らが勝手に捏造した情報だ。 これは、昔の武士道精神の時代では、一番恥ずべきもので、腹をかき切ってけじめをつけるべき行為である。 そのことを、腹の底では分かっているから、子供にはすぐ見抜かれるのだ。 金融業界の連中も、今では、一番悪質な高利貸しになり下がり、彼らの判断ひとつで首吊り自殺者が続出している、一番の現代悪質代官になり下がっている。 やはり、親の出来不出来が、子供に影響する。 まさに因果応報そのもので、マスコミのペンの力で嘘八百を記事にし、他人の人生を台無しにするようなことをしていれば、恨みの蓄積は相当なもので、いずれその報いが来る。それが、自分たちの子供に来ているのだ。 金融業界も、これだけ悪行三昧をしていれば、必ず、その報いは来る。 「親の因果が子に報い」の諺を忘れていたら、彼らは、必ず地獄を見る。 それが、すでに現れてきているのだ。 昔、財閥系の超大企業の社長の息子がヒッピーになった有名な話があるが、これも親の因果が子に報いたのだ。 これからの日本には、親の因果の報いを受け継ぐ若者で溢れて、ちょうど室町幕府三代将軍義満の因果が子の義教に報いて暗殺された結果、応仁の乱を招き、日本全土が戦国の世になったのと同じことが繰り返されそうである。 日本という国は、今、建国後最大の危機に直面していると言っても過言でない。 親の報いを受けている子供だから、子を叱ったりすることが出来なくて、親の威厳さえ失っている。これでは子犬のときから躾をしていない飼い主をなめる犬になってしまって、もうどうしようもない狂犬になっているから、毒殺処理でもしないと、世間に多大な犠牲を強いることになる。 ご老体と五郎は、このまま放置すれば10年以内に、この国は消滅してしまうと真剣に考えるようになった。 「何とか、親の因果の報いを受けている若者の精神に、新鮮な息吹を与えないと、この国は大変なことになりますね」と五郎はご老体に言った。 「その為にも、新しい道場は、彼らの再生を目的にしたものにしたいと思っている」 ご老体は、深刻な表情で決意のほどを、五郎に話した。 |