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第七十六章 元寇再来 日本経済がピークの時、世界のGDPの4分の1が日本、3分の1がアメリカで、この二国で世界の半分以上を占めていた。 当時、中国のGDPはアメリカの10分の1しかなかった。 それが今では、中国のGDPは日本と並ぶ勢いで、時間の問題で日本を抜き去ると思われる。 かつて、20世紀の終わりから21世紀にかけて、中国は広大な土地と安い人件費で、生産拠点として注目を浴びていたが、市場規模としてはまだまだ小さかった。 しかし潜在的には、12億人を超える人口を抱える市場は、絶対に無視できない。 霞でも食べて、洞穴に住み、衣類は着ずに裸で生活する原始人でない限り、12億人という数は巨大だ。 15年ぐらい前、まだ年間平均収入が5万円ぐらいの時、テレビブームが起こったことがある。テレビの価格が5万円ぐらいである。一年間の総収入と同じ価格のテレビを中国国民は買いまくった。日本の一般家庭なら、絶対に買わないであろう。 昔、プロレスが大人気の時、テレビ中継を見たくて街の電気屋の前に人が集まって見ていた。その頃の日本が、テレビが4、50万円で、年間収入も4、50万円ぐらいだった。その頃家庭でテレビを持っているのは、1%もいなかった。 それと同じ経済状態である中国なのに、ほとんどの家庭がテレビを持っている。 この違いの原因は一体何なのか。それは中国人のメンタリティーから来ている。 中国人は、というより、日本以外の世界の国は、自分の財産を、お金で持つことは絶対にしないのが常識なのである。物で所有することが財産の意味なのだ。 だから、お金を蓄積するという考えはまったくと言っていいほど無い。 お金があればすぐに物を買う。日本人は物を買わずにお金を貯める、こんな国民は極めて珍しい。 それは、島国だということと、農耕民族だったことから来ている。 よその国から侵略を受けることなど頭にまったくない、また農耕民族は、定着型だから移動性の良い財産を考慮しない。 ところが、大陸の世界はいつ侵略される分からない状況下に常にあるから、移動性の良い財産に常時しておく必要があるのだ。貴金属にこだわるのはそういったところから来ている。 だから、一年の収入相当額の消費財でも簡単に買う。この違いは市場形成の過程で大きく変わってくる。 そうなると、12億人ということは、世界の5分の1の市場ポテンシャリティーを持っていて、しかも顕在化のスピードは速い。 国土の広さではアメリカとほぼ同じ、人口はアメリカの6倍。単純計算でアメリカの市場の6倍だ。 アメリカの2百年の歴史を振り返って見ると、最初の百年は自国の市場形成に専念したが、その後、膨れ上がった生産供給力をカバーするために世界に市場を求めた。 そして世界の市場の半分を制覇した。1950年から60年代がそうであった。 そして、一人勝ちの体が続くと、慢心がおき、努力を怠るようになって、そのうちに対抗するものが出てくる。それが1970年から80年代だった。 今の中国は100年を経たアメリカと同じ状態にある。しかもポテンシャリティーはアメリカの6倍だとなると、中国の世界の市場への進出は、もうそれほど先の話ではなくなる。 当然ターゲットは、一番近くにあって市場規模の大きい日本だ。 アメリカが一番恐れているのが中国であり、その中国が日本を支配することになったら、世界の盟主はアメリカから中国に移る、とアメリカは戦前から考えていた。 だから、大東亜戦争を、太平洋戦争に変えたのであり、そうすることで中国の台頭を抑えたかったのである。満州を侵略した日本は、アメリカにとって、虎の穴に入って行ったハイエナに見えたのだ。それによって虎が目を覚ますことを恐れたのが真相である。日本などはなから相手にしていなかったのである。 21世紀に入って、また同じ様相を呈してきた。 「もう、中国の日本支配の動きは間もなくだ」とご老体が言うと、 「元寇の再来ですな。今度も神風は吹きますかね」と五郎は、顔を横に振りながら言った。 |