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一期一会 未(ひつじ)二十六の日(その一) そのままに 生まれながらの 心こそ ねがはすとても 仏なるべし 生まれながらの心は、一体何才ぐらいまでだったでしょうか。 あなたの記憶は、何才ぐらいから消えていますか。 3才頃のことを憶えていると、あなたは自慢気に言われますか。 いや、2才の時のことを憶えているという方もいらっしゃる。 それは大したものです。 2才で、あなたの生まれながらの本来の心を失ったとは、誠にお気の毒なことです。 2、3才で天才的才能を発揮した人は、100%普通の大人になります。 2、3才が、その人のピークなのですから、それ以上成長することはあり得ません。 出来れば−不可能なことですが−ずっと死ぬまで、生まれたままの心の状態であれば、良いのですが、母親から始まる条件付けが高じて、生まれながらの、ホコリのない、あるがままの姿を映し出す鏡に、ホコリがいっぱい溜まっていくのです。 そのホコリの溜り初めが、記憶の始まりであることを、よく覚えておいてください。 記憶の始まりと同時に、あなたは本来持って生まれた宝ものを失って行き、その代わりに、ホコリばかりを貯めてゆくのです。 あなたは、お金持ちになって嬉しいですか。 テレビで、お金持ちになって、この絵は数千万円した、この壷は何百万円したと言って自慢している人は、恋したいと思う魅力的な人でしょうか。 誰もが、解っている。 解っているが、解りたくない。 これが、凡人の、煩悩に翻弄されている人間の実態であります。 失った生まれたままの心を早く取り戻すことです。 それだけで、あなたは悉有仏性即ち、 ねがはすとても 仏なるべし であります。 一期一会 未(ひつじ)二十六の日(その二) わたしが、貿易の仕事をしていた時の話です。 当時、中国はバリバリの共産主義国家でありまして、日本の大企業は、まったく中国を相手にしていなかった時代のことです。 中国共産党の幹部で、石油関係のトップの方が日本を訪問され、わたしが勤めていた会社にも来られたのです。 わたしがいた会社の役員連中は、鼻もかけない不遜な態度で応対したのです。 しかし、中国の幹部の方は一言も文句も言わずに帰国されました。 そして、平社員のわたしに手紙を送ってこられたのです。 工場を見て興味を持った製品があったので、サンプルを提供して欲しいというのです。 上司は、悉く反対。 本部長の専務ごときは、「中国なんか相手にしたら、利用されるだけだ!」と言って、聞く耳を持たないのです。 しかし、わたしは中国のポテンシャリティーの大きさに魅力を感じていました。 そして、技術担当部長に水面下で交渉して、黙ってサンプルを送ってあげたのです。 そうしますと、その幹部の方から、わたしに中国への招聘状が舞い込んで来たのです。 さすがに、上司も認めざるを得なくなり、わたしは初めて中国に行ったのです。 北京、済南、青島、上海と汽車の旅をしながら、当時、中国との商売は殆どない日本でしたから、相手側も興味津々で、それこそ熱烈歓迎してもらいました。 そして遂に大口注文の契約になったのです。 そうしますと、猛反対していた例の専務さんが、契約の調印に行きたがっていると言うのです。 『何と、破廉恥な奴だ!』と思ったわたしですが、先輩の方から、「花を持たせてやって欲しい」と頼まれ、わたしは渋々了解し、北京に契約の調印式の為に一緒に行ったのです。 専務さんは、てっきり調印の儀式だけだと思っておったのですが、実は、まだ一部価格交渉が残っていたので、相手側は専務さんに、半値の値下げを要求してきたのです。 本契約の方は、わたしの言いなりの価格で決めさせられた経緯があったものですから、金額的には大したことのない付属品の価格を決める交渉では相手方は復讐戦のつもりで半値要求をしてきたのです。 びっくり仰天したのは、その専務さんで、たくさん出席している談判廊の中で、手が震えておるのです。 「新田君、わしはこんな半値要求を受けることは出来ない!」 とわたしに文句と救いを求めておるのです。 わたしは、言ってやりました。 「本契約で、がっぽり儲けているのですから、そんなもん大したことないじゃないですか。半値で受けてやりなさい!」 「本当に受けていいのかね?」と大企業の専務さんが、同じ会社の平社員に伺いを立てておるのです。 相手方は日本語を解らないのですが、感覚でその雰囲気を察知して、同僚たちに、「ミスター新田の命令で、自分の半値要求を受けるようだ!」とわいわい言っておるのです。 そんなことも知らない専務さんが、急に立ち上がって、英語で言うのです。 " I accept your request" 相手方のその交渉責任者も立ち上がって、握手を求めて手を差し伸べてきたのです。 しかし、その相手は、専務さんではなくて、わたしに対してでありました。 彼らは、実際に決断する力を持っている重要人物は地位に関係ないことを、きっちりと知っていたのです。 そして、その日の夜、晴れて調印式の宴となったのです。 ところが、その専務さんに、ハイエナのような大手総合商社の幹部が、こっそり付いて来ておったのです。 そして、その破廉恥な専務さんを唆しておるのです。 契約式直前に、その破廉恥専務が、ホテルの自分の部屋にわたしを引っ張り込みレープしようとするのです。 「新田君。あの商社は情報をいっぱい持っておるから、契約当事者に入れておいた方が得策だ」 『何と卑劣なオカマ堀りか!』 わたしは怒り心頭に達していましたが、『まあ挿入させなければいいか!』と思って、からかってやったのです。 「いや、そんな情報は駅の掲示板に書いてある程度のものですから、心配に及びません」 すると、そのおっさん、しつこく言い寄ってくるのです。 「それなら、眠り口銭でもやったらどうかね?」 もう臭くて臭くて、我慢出来ずに、「いい加減にしろ!このオカマ野郎!」と言って部屋を出て行ったのです。 機嫌の悪い、そのおっさん。 契約調印式の宴席の後、「今日の料理は値段の割にまずい!」と、いちゃもんつける始末。 呆れて、わたしは何もしゃべる気分になれません。 『絶対に、大企業の偉いさんにだけはなるまい!』 と思ったのでした。 そのおっさん。 帰国するや否や、役員会で、日本でも珍しい中国ビジネスをやってのけたと自慢しておるのです。 それを真に受けた当時の社長も間抜けな奴でして、『日本の大企業のトップもレベルが落ちたもんだ。これでは日本の高度経済成長も危ないもんだ!』 そう思ったのが、もう20年以上前のことです。 それから20年。当時、中国の幹部の方の秘書だった青年が、わたしと親しくなって、今ではロスアンジェルスに住む億万長者になっているのです。 彼とは今でもラスベガスと行き来している友人になりました。 人間の重みは、この世的地位では決してありません。 年齢と共に条件づけされて、本来の自分の心を失っていくこの世で、人間の真の価値とは、生まれたままの心を保つ努力をし、且つ失ったその心を取り戻す姿勢で生きているかに尽きるのであります。 |