一期一会  未(ひつじ)二十九の日(その一)

はしなくて 雲のそらへは あがるとも
くどんの経を たのまれやせん

人間が一人一人精神的成長を遂げることに、基本的には他の助けを必要とすることはありません。
師匠と弟子の関係においても、それは最上の方法ではないのです。
自力で、気付くことがすべてであると、わたしは思います、
一休さんも、そう言っておられるのです。
あなたが、自分だと思っている、漂う雲。その雲の向こう側に真っ青な広大無辺な空がある。
雲から空へ掛ける橋はない。
そして、その橋を求めて、お経を唱えても、そんなものは何の役にも立たないのです。
師匠と弟子の関係は、確かに、雲と橋の関係でありますが、雲も橋も実体のないものであります。
あなたが自分だと思っている雲なぞは、どこにもないと師匠は、あなたから雲を取り除く作業を手伝ってくれているのです。
実体のない雲ですから、そんな雲に掛かっている橋も、単なる概念であって、実体ではありません。
従って、お経なぞも、実体のない橋の形をあれやこれやと、ぶつぶつ唱えておるだけで、全く無用の長物であります。
本当の自分の在り家は、わかっているのです。
本当の自分の姿は、わかっているのです。
在り家も姿も、広大無辺の境界のない、真っ青な空であることを、自覚することです。
わたしが在るなら、I am Satoshi Nitta であります。
わたしの在り家は、I am that I am であります。
本当のわたしの姿は、I am in taht I am であります。

一期一会  未(ひつじ)二十九の日(その二)

オカマ野郎のお話が好評で、もっとそんな話を聞かせて欲しいという要望が強いのですが、あまり個人攻撃をするのは、よくありません。
あのオカマ専務も、それなりに良いところはあるのです。
わたしは、貿易部門に所属していましたから、営業活動であるわけです。
オカマ専務さんは、営業の立場で、貿易部門を、会社の中でそれなりの位置づけに持っていった功績は、今でも評価しています。
ところが、オカマ野郎の連中が、限りなく存在しておるのが、大企業でありまして、この気の毒なオカマ専務も、もう一人のオカマ野郎と比べたら、かわいいものです。
このオカマ野郎は、最後は副社長まで昇りつめ、勲章まで貰う始末で、世の不条理を肌で感じたものです。
このおっさん、製造工場を管理する部門のおっさんで、幾つかある工場の総責任者でおったのです。
例のオカマ専務と、一時期は出世争いをしたライバル同士でして、自分の出世の為に、わたしを利用しようと、二人とも考えておったのです。
わたしも、変な運命に翻弄され、出世ライバルの二人のオカマの争奪戦に巻き込まれてしまったのです。
それは、新聞紙上を賑わすような大きな契約を取ってくるものですから、彼らからすれば、わたしは黄金の卵であったのです。
ある時、わたしがいたイランから大量の注文を取り、一流新聞紙の一面に大きく出たことがありました。
受注した製品が、二つの工場にまたがっていて、各工場は通常の2倍の価格で契約した二つの製品の利益配分を、営業のわたしのところに陳情に来ておったのです。
「コストに見合った価格でいいのではないでしょうか」
とわたしは淡々と言ったのですが、工場の課長さんがこう言うのです。
「あの製造本部長は、もう一つ肩書があって、今回の製品の一つの事業部長も兼任しているので、いいとこ取りをしようとしている。その結果、我々の工場の採算は赤字になってしまう。そんな不条理がまかり通るのが、この会社の製造部門で、あの製造本部長が元凶だ。それを阻止できるのは、君しかいない」と言うのです。
わたしも、あのおっさんの曲がりくねったおちょぼ口には、前々から警戒をしていたのですが、そんなひどい奴と知らなかった。
そこで、この案件での会議が工場であった時に、この曲がりオカマと対決したのです。
会議の上席に座ったこの曲がりオカマが、みんなに報告するよう指示しておるのです。
わたしは営業の責任者として出席していました。
コストがどうだ?品質はどうだ?と工場管理者同士でやりおっている。
それを、曲がりオカマが差配しておるのです。
そして懸案の利益配分の話になると、このおっさん既定の事実として、わたしに価格配分の命令をしてくるのです。
みんな、このおっさんの前で起立して発言をしておったのですが、わたしは座ったままで発言しました。
「ここに配りました資料を見て頂ければ一目瞭然でありますが、競合他社と比較して、当社の品質及びコスト競争力は極めて劣っている。その中で、今回の大きな利益を伴う大型受注は、一重に我々の営業の力に負うところ大であることは、ここに出席されている他部門の方々も認識されているはずです。要するに、技術部門、製造部門の無能さを、我々有能な営業部門がカバーしておるのです。そんな無能な部門の責任者など、なんの発言権もありません。従って、今回の案件の利益配分は、わたしが決定いたします。よろしいでしょうか?」
そう言って、曲がりオカマの方を向いたのです。
このおっさん、下を向いて、握りしめた拳を震わせておるのです。
「何か言うことありまへんのか?」
こっちから挑発しても、我慢しておるのです。
この曲がりオカマとの闘いの幕は切って下ろされたのです。