一期一会  未(ひつじ)八の日

わたしには心臓に持病があることは前に申しましたが、実のところ、もうひとつ厄介な病気を抱えております。
不眠症という奴でありまして、別名睡眠薬中毒と申します。
きっかけは、以前の仕事の場が海外であった為、時差ボケが烈しく襲ってきて、その時差ボケで若い時に、血圧が乱高下する自律神経失調症になったこともあります。
アメリカやヨーロッパに行くだけなら、17時間とか8時間の時差を調整すればいいのですが、わたしの仕事の場が中東を中心の周辺世界でしたので、西の端の北アフリカのセネガルやポルトガルから東の端はアフガニスタン、パキスタン辺りまでしょっちゅう移動する訳で、その地域の時差が4時間程あり、気候の違いも加味され、すさまじい地域差の中を数ヶ月行ったり来たりすると、体の調節機能が麻痺してしまって、自律神経がやられてしまうのです。
ニクソン大統領時代の特別補佐官であったキッシンジャー氏が当時、外交の事前交渉の為、世界を飛びまわっていたものですが、彼が訪問する国はすべて彼が拠点としているアメリカのワシントンDCの時間帯に合わせたスケジュールになっていたのも頷けると思います。彼の行く処は、世界どこであってもワシントンDCの時間ですから、彼には時差ボケの悩みがなかったのです。
彼のような大物ではないわたしでしたから、その国に行く毎に、その国の時刻と気候に合わせなければならない。しかもその調整を数日間隔で、しょっちゅうしなければならない訳ですから、これは大変でした。
結局、睡眠薬に依存するしかなかったのです。
以前の仕事から離れて、アメリカやヨーロッパに落ち着くようになってからは、睡眠薬を飲むことはなかったのですが、最近の体調不良で、つい飲んでしまって、その薬抜きで七転八倒しておるのが現状であります。
三日間ほど、実際には寝ておるのですが、寝た感覚はまったく無い訳ですから、心身、特に精神が参ってしまいます。
これを書いておるのは四日目でありまして、過去の経験から少しは薬が抜けてくるだろうと予想していましたが、なかなか今度はしつこいのです。
それでも、少しは夢を見る眠りが出来るようになったから、これから徐々に良くなって行くであろうと思うので、こうやって恥を忍んで書けるのです。
夢を見るのは、精神の浄化作用の為でありますから、夢を見ることが出来ない程辛いことはありません。まったく生き地獄であります。
正直申しまして、ここ三日程は配信も中止したい気分でありましたが、意志を貫くのを信条としておりますので、余計厳しい状況に自ら追いやっておるのです。
すべて、わたしの所為であるのです。
夢を見る眠りが出来たきっかけは、辛い中で、一休さんの本を読んでいて、『サトリ』という言葉に救われたのです。
常々、生身の人間では悟りは不可能と思っているわたしですが、悶々としている中で、『サトリ』という文字を頭で描いていたら、何かが起こったようです。
そして、夢を見る眠りを四日ぶりに出来たのです。
鬼神四郎に国常立命(くにとこたちのみこと)が降臨した際に、何か「ドカン!」という音のようなものがした、あれです。
詳しくは、ひょっとしたら、これがきっかけで新しい作品を書くかも知れませんので、予告編版として、このことをみなさんにお話しておる次第です。