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第十章 醜いアヒルの子 醜いアヒルの子という話しがある 実際には醜いどころか 白鳥の子なのだが アヒル仲間では醜い子鳥だ どぶねずみの中にも 醜いどぶねずみの子がいることに ヨシ吉は気がつかない ケイ吉もミノ吉もそうだったが 集団になると必ず 醜いアヒルの子がいる それを見抜く眼力がない ないというより目のレンズが曇っているからだ 曇らせているのは 他でもない自分なのだが どぶねずみ というねずみは 特に曇っている いつも 薄暗いどぶの中で じめじめ暮らしているのだから 曇るのも当たり前だ だから 盗人稼業しかできない 鬼のヘイ吉のように 日向に当たっているところにいると 自然に 毛艶も良くなる そして 毛も明るい色になっていくから 目も鼻も良く利くようになる いい循環になる だが どぶねずみは 最悪の循環だ もともとは 同じねずみだったのに おちぶれて どぶねずみになっただけだ 自分の性根が 悪かっただけだ 情けなかっただけだ 鳶が鷹を産む という諺があるように どぶねずみにも 中には見込みのある どぶねずみの子がいるものだ それが醜いアヒルの子だ その醜いアヒルの子を如何に発掘するか それがヨシ吉の眼力にかかっている 今のヨシ吉では あまりにも経験が 無さ過ぎる またヨシ吉の育ってきた 環境が それに輪をかけて眼力を落としてきた 食い物の調達係り しかも ミノ吉親分の世話役だったから あまりにも世間が狭い 内広がりの外すぼみの典型のミノ吉の下で 長い間 お務めにも加わらず 世話係りをしていたら 当然そうなってしまう まわりの 子ねずみ連中からしたら なんでえ お務めの経験も ねえ野郎が えらそうな ふりしやがって と反感を持つ もう今は オスの能力も無くなり 顔つきも メスっぽくなってきたコメ吉も やはり ヨシ吉に対して そう思っていた コメ吉も 本筋のお務めの能力は からっきし無かった だが たまたま ミノ吉が急ぎ働きを好んだし お務めぶりが ミノ吉と 同じ流儀だった それが 幸いして のし上がってきたのだが 本筋のお務めになったら 三流もいいとこだ 何とかして 本筋の お務めで一流のねずみ材が要るのは 分かっているのだが その眼力がヨシ吉には無い ヒントは 醜いアヒルの子を発掘することだ |