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第十三章 一家の不出来者 ヨシ吉は 鬼のヘイ吉との話しを誰にも喋らなかった 喋れる子分がいなかったのだ そうこうする中で ミノ吉一家の頃の エリートの若いもんたちが ヨシ吉にせまった お頭 いってえお務めは いつになったら 始めるんで もう俺たちやあ 我慢できねえ ヨシ吉と同格だった子ねずみ連中が 若いエリートねずみをそそのかしていたのだ だが その若いエリートたちの横の隅っこに 変った奴がいた お頭 俺は お務めは 決して 盗人稼業だけとは 思っていねえ もっと まっとうなお務めもあるはずだと思いますぜ ミノ吉親分の頃は 俺たちゃあ 下働きだったから 意見を言うような身分じゃなかった だが 下から見てても ありゃあ あんまり 感心できる お務めじゃなかった 新しいお頭になってから まったくお務めがねええもんだから 遊ぶ路銀もねえ だが 俺は 今すげえ 気分がいいんで 分かりやすか それを聞いてたエリート連中が みんな よってたかって そのねずみに 罵声を浴びせた おめえみたいな 不出来者が何を偉そうな口を叩きやがるんだ 黙って引っ込んでろ ヨシ吉は この若いもんの名前すら 知らなかった おめえは なんて名だと ヨシ吉が聞くと あほう烏(カラス)のトシ吉というんで なんでえ おめえは あほう烏を 脇仕事に してるのかい へえ その通りで どぶねずみの娘たちが 貧乏くらしの中で どうしても稼がなきゃあ ならねえもんだから あっしが まっとうな ねずみ連中の下世話をかねて やっている んで 娘たちの親からも 喜ばれているし まっとうなねずみ連中も 玄人の女郎よりも安心できるもんで 喜んでもらっていやす あっしは 急ぎ働きより ずっとましな お仕事と思っているんで あほう烏とは 隠し言葉で 素人娘のポン引きのことを言う お頭 この際 盗人稼業から 一家全部 足を洗ったらいかがでしょうか お仕事ならその気になりゃあ いくらでも ありますぜ 少し頭を使えば ヨシ吉は 若い連中にも こんな考えを持ってる連中が いることに驚いた 醜いアヒルの子はいるんだ 今まで 目の届かなかったところに いるではないか 思い込むことが どれだけ 視野を狭くしていたか 思い知った おめえだけか あほう烏の脇仕事をやっているのは ヨシ吉が聞くと あほう烏のトシ吉は 答えた 他にも 自分の甲斐性で 貸し座敷の商いをしているのもいやす 美人局(つつもたせ)のカン吉てやつで こいつなんぞは 急ぎ働きは もううんざりだ と言って お務めになると どこかに雲隠れ しやがるんで 他にも仏のオカ吉というのもいやす そいつは その名の通りの奴で あっしは なんで こんな奴が盗人稼業に足を染めたのか 未だに 分からねえんで やっぱし どぶねずみが いけねえんです 何とか どぶねずみが いなくなるような ねずみの世の中にしたいとみんな 思っていやす てめえの了見の狭さに 情けなくなったヨシ吉だったが 何か妙に 気分が良かった よし これからは こいつら 若い連中を 傍に置こう とヨシ吉は思った トシ吉 てめえらの 仲間はどれぐらい いるんだい へえ さっきの 美人局(つつもたせ)のカン吉 仏のオカ吉 そして ドクロのシオ吉 大手のノリ吉 お人良しのヤノ吉 意見屋のタネ吉 物真似のウチ吉 無口のヒロ吉 奴らの先輩で今は第一戦を離れていやすが 助っ人のシマ吉 そして ケイ吉のとっつあん と長い付き合いをしていなさる 御意見番のツジ吉のとっつあん たちが みんなミノ吉親分のやり方には うんざりしていた連中ですぜ そして 下っ端には ぴちぴちした若いもんが いじいじしてミノ吉親分のときは しょっちゅう愚痴を言ってやして あっしらが 何とか なだめすかしていたんで あほう烏 これから おめえを若頭にするから そいつら若い連中を束ねてくれねえか 喜んで お引き受けいたしやす 横で聞いていたエリートねずみの連中が ざわざわ 騒ぎ出した お頭 そりゃあ ねえでしょう こんな出来の悪い奴等を 使いなさるんで 馬鹿やろう てめえらこそ なんでえ いいときだけ 我も我もと出しゃばりやがって 肝心なときにゃあ こそこそ どぶの底に隠れるだけで もう いい加減にしろ おめえたちは もう御用済みだい とっとと 消え失せろ あほう烏 ひとつ 若い骨のある連中の面倒を見てやってくれ 頼んだぜ あほう烏は 一家に入って初めて道理の分かる親分に出会って良かったと涙を流した いよいよ 新しい一家の 旅立ちだ ヘイ吉様に みんなを お目通し しなきやあだが その前に 大掃除をしとかなきゃ とヨシ吉は思った |