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第十五章 トシ吉の天敵イケ吉 お頭のヨシ吉に若頭に抜擢されたトシ吉だが 人は良いが とっぽいところが気になる そこにつけ込もうとしているのが ケツ軽のイケ吉だ このイケ吉は その名の通り おのれの上の幹部には いたれりつくせりのゴマをする ケツを貸すには まだ身分が低過ぎるし またこいつのケツが根性が表われているのか あの好きもんのミノ吉ですら 目をそらしたほどの汚さだ 一度 変な病気を飯盛り女からもらって 一生治らないと言われて やけくそになっていた コメ吉がこのイケ吉の誘惑に乗ったが さすがのコメ吉も へどが出る思いで その後二度と手を出さなかった このイケ吉が じゃれつくのが うまい ヨシ吉も このじゃれつきに 騙されている節がある ヨシ吉も用心深いから イケ吉には注意しているだろうが このイケ吉 何か ミノ吉や コメ吉の弱みを握っているらしく なかなかしぶとい だから ヨシ吉も そこそこに付き合ってやっているとも思える このイケ吉 トシ吉が若頭になったから面白くない 頭のずるさでは トシ吉は 歯が立たない ところが トシ吉の強みは イケ吉と同じで すぐに誰にでもじゃれつく能力がある しかも イケ吉のじゃれつき方は いかにも 見え見えだが トシ吉のはナチュラルだ じゃれつかれる方は 悪い気はしない イケ吉の場合は よほど頭のいかれたコメ吉みたいなもんしか 騙されないみんな 警戒する このイケ吉の笑った顔の裏に 何とも言えない 汚さが見えるからだ その点 トシ吉は あほう烏の名の通り 心配しなくていい 騙されることはない だから 死んだミノ吉にも すぐじゃれつきに行く ただ 非常に小心だから その場逃れで何を言い出すか分からない しょせん どぶねずみの世界だから 欲も言えない 一方 イケ吉が 不穏な動きを最近している 今まで お努めの前の偵察の仕事ばかりしていた 座頭のトモ吉が しょっちゅう出回る仕事柄 家を空けることが多く そのうちに 女房が変な坊主に騙されて 流行宗教に犯されてしまった そのお陰で 夫婦仲がおかしくなって 引き込み役の おまん にぞっこん惚れてしまった しかし この世界では 仲間内の 色恋は ご法度だ また おまんも 座頭のトモ吉にはまったく関心がなくて 思いきり肘鉄を食らわしてしまった それで 偵察の仕事をはずされて お努めの大事な役を今はしている ところが この仕事が これから絶対にしてはならない 急ぎ働きの役だったのだ 鬼のヘイ吉に約束させられたヨシ吉は トモ吉の役をはずさなければならない しかし そこへ イケ吉が トモ吉ににじり寄った トモ吉は すぐに いばりちらす悪い癖がある そのため ライバルのミキ吉に負けて これから 撤退していかなければならない 急ぎ働きの連中の集まりのトップにした それなのに イケ吉が まだ急ぎ働きをしようと トモ吉をけしたてている トシ吉の言う路線を行くしかないヨシ吉だが すぐには出来ない ある程度は トモ吉らも使わなければならない しかし 急ぎ働きだけは 絶対できない 殺さず 姦さず 貧乏から盗まず そして 鬼のヘイ吉から 念を押された 性質の悪い金持ちから全部は盗まないこと これを 果たして トモ吉、イケ吉が守るか はなはだ危険だ そこで ヨシ吉は 悩んでいた それを察した トモ吉が 相談もせずに 盗み取り締まり役宅の門の前に立った |