第十七章 呼び出し

密偵のシン吉が 鬼のヘイ吉の手紙を持って ヨシ吉のところに来た

手紙には 簡単に 明日会いたい ヨシ吉の信頼出来ると思う子分をみんな 連れてくるように と書いてあった

ヨシ吉は すぐトシ吉を呼んで 明日 出掛けるから

トシ吉の仲間をみんないっしょに つれて来るように と言った

トシ吉は ひょっとしたら 鬼のヘイ吉の 計らいでは と思ったが

へい 分かりやした と答えた

どくろのシオ吉 大手のノリ吉 お人好しのヤノ吉 意見屋のタネ吉 仏のオカ吉

物真似のウチ吉 無口のヒロ吉 美人局(つつもたせ)のカン吉 仕事師のハシ吉

情報屋のサト吉 お調子もののタケ吉 ごたんのヤマ吉 腰砕けのダイ吉

これら若手に加えて 助っ人のシマ吉 と 御意見番のツジ吉のとっつあんにも

いっしょしてもらうことになった

目立たぬように 夜半刻に ヘイ吉の役宅に 全員入った その入り方が粋だ

盗人の お手のものの 正面の門からではなく 裏塀越しに忍び込みだ

中庭のヘイ吉の部屋の前でヨシ吉が 言った

ただいま ヨシ吉一家 参りやした

障子が開いて ヘイ吉が 奥方と 筆頭同心の タケ吉と一緒に 縁台まで出てきた

よう よく来てくれた しかし いってえ 何人来たんだい ずいぶん 大勢だなあ

へい 申し訳ございやせん 信頼おける奴みんなと おっしゃったもんですからそうか そうか まあ みんな あがってくれ

盗人が 盗み取り締まり役長官の役宅に招かれるなんて 前代未聞だ

ヨシ吉が ひとりひとり 紹介していった

どくろのシオ吉 てめえ 以前 俺と顔を合わしたことがあるんじゃねえか

へい よくお憶えで あっしは あの時のことは 忘られやせん

そうだなあ おめえ 一度 お縄になって お調べを受けたとき 最後まで口を割らずに

親分の命令じゃなく 自分でやったと言い張っていたっけ

へい その通りで そして お縄をおとり頂きやした

そうか そのときの おめえの 口上が 俺は気に入ったんだ

ヨシ吉 このシオ吉 俺に何ていったと思う

親分は自分に何も言ってやせん あっしが 親分の目が言ってなさると思ったんで

こんなことを 言いやがるんだぜ 俺はあきれ返って思わず笑ったぜ

いやあ しかし あれ以来 あっしは十二指腸潰瘍で体を壊すわで もうこりごりで

盗人稼業は

それを 聞いてたみんなが 大笑いした