第十九章 押し込み決行

いよいよ ヘイ吉の指示が出た

押し込みの刻限と場所が その日に出た

ヨシ吉一家の 急ぎ働きの連中は お努めの日と場所を何度も聞いたが ヨシ吉は

万が一にも漏れてはやばいからと言っていって誤魔化していた

場所は 日本橋の越後屋だ 日本一の大棚だ

刻限は子(ね)の刻だ

いでたちは 急ぎ働きの連中には 赤頭巾をそうでない連中には 白頭巾をつけさした

なんで 頭巾の色が違うんでと いぶかしがる奴がいた

おめえらは すぐに 姦したり 殺したりして 血しぶきがあがる 赤頭巾だと目立たないだろう

中には 殺すのを嫌がる仲間もいる 奴等は おめえたちとは 一線を画すという条件で

お努めに参加するといってるんだ

白頭巾だと 血しぶきが目立つからな 余計殺生はしないためにだと言っているんだ

ふん あまっちょろい奴らだ 好きなようにしろ さあ今晩は思い切り楽しませてもらうぜ

お頭 あんたも 当然白頭巾なんだろう ふん!

ヨシ吉は 哀れな奴等だと思った

江戸中の盗人一家が 子(ね)の刻に 越後屋に集結した

越後屋は 日本一の大棚だ

店のまわりの塀だけども 一町はあるし 裏戸だけでも二十以上ある

十三の盗人一族にそれぞれ違った裏戸から 引き込みが戸を開けて引き込む段取りにしていた

さすが 日本一の大棚だけに あっちこっちの蔵だけで 三十以上ある それもばらばらに散ってある

ヘイ吉は ひとつの大棚で 江戸中の盗人を一気にお縄に出来ると思うとぞくぞくしてきた

白頭巾と赤頭巾の盗人が 運動会のように うろちょろしているのを考えるだけでもぷっと吹き出す

所詮 悪事を働く奴は 滑稽なもんだ

それぞれの蔵に 盗み取り締まり役の役人が総出で待ちうけていた そして赤頭巾の連中はみんな お縄になった

白頭巾の連中も 一応お縄になったが 別々の牢に入れられてから みんな 知らぬ間にいなくなった

それを 騒ぐものは 誰もいなかった

赤頭巾の連中は みんな 獄門首にされた

その前に 白頭巾の連中の処置はどうなったかと聞かれると 役人は口を揃えて 全員遠島だと答えた

それを 聞くと 赤頭巾の連中はみんな 自分は 殺し 姦しはやったことは一度もないと泣いて 役人の足にすがった

殺し 姦しを平気でやる奴ほど 自分が殺されるとなると 小便をちびって震える

所詮 こういう奴等は 魂が腐っているから こんな みっともないことを 最後にするんだ

自分が殺めた相手のことを考えたら こんなみっともない態度が出来るはずがない

元からどぶねずみの性根だから こうなるんだと ヨシ吉は思った