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第二十章 溝鼠から鼠へ ヨシ吉は 念願のまっとうな稼業に専念できるようになった 鬼のヘイ吉の お上への言上もあって それまで なかった ねずみ入れ稼業という口入れ稼業で生計を立てれるようになったし 一本差しを許されて ねずみにもいる 悪どい 奴等から 一般のねずみを守る自警団をつくることも許された 侠客のはじまりはここから起こった もともと 二本差しから 丸腰の一般ねずみを守ってやるためにできたのが侠客であるのに また最近の どぶねずみは 弱いものをいじめて金をまきあげようとしている ヨシ吉が目指したまっとうな 正業とは こういった弱いものを 守る仕事だったのだ 思えば ミノ吉のそばで 盗人稼業を教えられ 急ぎ働きを何度も見てきた ヨシ吉にとっては 今こうやって まっとうなねずみ生を送れているのが 奇跡のようにも思える それは あほう烏の あの一言で変ったのだ あほう烏は 今どうしているのだろう 他の連中もどういしているのだろう そう思うと急にヨシ吉は 彼等に会いたくなった 久しぶりに鬼のヘイ吉の役宅を訪れたら なんと そこにあほう烏のトシ吉も どくろのシオ吉も 美人局(つつもたせ)のカン吉も 大手のノリ吉も 意見屋のタネ吉も 無口のヒロ吉も お人好しのヤノ吉も いるではないか おめえたち ここで 何をやってんだ お頭 おひさしぶりで 俺たちゃあ ここで 盗み取り締まり役ねずみの仕事をしておりやす その後 どぶねずみの 盗人一家は絶滅しましたが 今は ねずみの しかも 高い地位を 利用しての 盗人稼業が 大流行で そいつらを お縄にする仕事をやっています 仏のオカ吉はどうした ほら オカ吉は 今や お頭のヘイ吉様の片腕になって 我々にとって雲の上の存在になっておりやす そんなに オカ吉は ヘイ吉様に買われているのか そりゃあ 仕方無いですよ お頭 あれだけ 努力していたら あっしらとは 雲泥の差が出ますぜ あっしらは 納得していますし オカ吉も いばらずに あっしらと 以前と変らねえ態度で接してくれています やっぱり どぶねずみといえども 努力した奴は 立派になりますぜ あっしらも 次に また どぶねずみに生まれてきても ひがまずにオカ吉のように勉強したいと思っていやす 帰る途中 ヨシ吉の胸の中に 渦巻くものが湧いてきた 俺も あいつらの仲間に入ろう! ―完― |