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第七章 鬼のヘイ吉 後顧の憂いもなくなって さあ これから お務めだと張りきっていたヨシ吉だった 鼠の一生というものは でこぼこだし 次から次へと難問が襲ってくる 特に 親分になって すべて自分で決めなければならなくなると 余計感じる もともとミノ吉の後を継いで親分になる気など これぽっちもなかったヨシ吉だけに 責任が大きくなっただけ余計しんどくなった以外何もいいことはないと思っていた こんなしんどいことをミノ吉親分はよくもまあ10年以上もやってきたもんだと感心はするが よほど脳天気でないとやっていけるものではないとも思う だからすぐ子ねずみだった自分たちに責任を押しつけてきたのだ そうでないとこんなしんどいことを長年やってこれるはずはない 特に盗人稼業で一番神経を使うのが 盗み取り締まりからの締めつけだ その総支配をしているのが 鬼のヘイ吉だ ヘイ吉はもともと立派な人間のお屋敷で 半ば人間の公認を得て住むことを許された 正統派で由緒正しい家の出だ だからそのお屋敷には猫一匹飼われていない ヘイ吉一族に どぎたないどぶねずみ連が ばらまく悪を取り締まるお役を与えた だから身なりも奇麗で どぶねずみのような いつも腐った水にまみれた どす黒いじめじめした身なりとは えらい違いだ 真っ白な毛並みで鼻もピンク色をしている どぶねずみのように臭いものばかり嗅いでいる鼻はどす黒い このヘイ吉が若い頃に極道の道に外れた経験があったものだから どぶねずみの盗人たちの世界をよく知っている そしてその頃からのつき合いで知り合った盗人の連中を更正させて 今では密偵として使っている その密偵の正体はまったく判らない 盗人稼業には ひとり働き と言って 一家を組まずに一匹狼で盗みの お務めをするどぶねずみが結構多い その中に密偵がばらまかれている ひとり働きする どぶねずみも 時にはその腕を買われて 一家のお務めに仲間入りする そこが 鬼のヘイ吉のつけめだ 一家の中に お務めの お助けと言って入り込んでいる奴がどこにいるか判らない 特にミノ吉一家は この盗人稼業の大手一家だった上に 急ぎ働きばかりをした だから 盗み取り締まりの鬼のヘイ吉はいつか この一家を一網打尽にしてやろうと狙っていた 鬼のヘイ吉に目をつけられたら もうおしまいだ さあヨシ吉は この苦難をいかにして切り抜けるか |