第九章 お縄頂戴

ヨシ吉は 何とかして本筋のお務めをしようと一家を束ねることに努力した

しかし ミノ吉一家の急ぎ働きの味をいったん知るとなかなか忘れられない

努力せずに お務めができ その上に姦すオマケまでついている

やはり 楽していい目をすると 汗を出して働く気になれないのが どぶねずみの性だ

急ぎ働きを 死んだミノ吉に教えたのが この筋稼業の専門のヤソ吉だ

ヤソ吉はケイ吉の学弟子だったが 若い頃から本筋のお務めより 急ぎ働きの方が

仕込み代もほとんどかからず てっとり早いお務めだから ケイ吉の目を盗んではミノ吉と急ぎ働きをしていた

ある日それがばれてケイ吉に説教をされた

それ以来 師匠のケイ吉を裏切ってミノ吉の方に走った その時ヤソ吉の手下だったカツ吉に

他の組の仕事ねずみに ケイ吉を脅すよう依頼した ミノ吉一家を旗上げするためだ

結局 この10年間の ミノ吉一家の急ぎ働きでヤソ吉とカツ吉は多いに活躍した

しかし ミノ吉は猜疑心が強い 結局最後はヤソ吉もカツ吉も切り捨てた

このヤソ吉 脳味噌が悪く 腹たちまぎれにミノ吉時代にやった急ぎ働きを 密偵のシン吉に自慢話しをした

シン吉は このことを 盗み取り締まり長官の鬼のヘイ吉に通報した

ついに ヨシ吉一家に盗み取り締まり隊が乗り込んだ

ほとんどの幹部や子ねずみ連中は お縄を頂戴した

だがヨシ吉だけは鬼のヘイ吉の粋な図らいで お構いなしで釈放された

ミノ吉時代から 一家の台所の調達係りをやっており お務めには直接関わっていなかったからだ

しかし 大半の子ねずみ連中は お縄を頂戴したから 一番大きな一家を張っていた組も半減し

しかも経験の浅い 若い子ねずみ連中だけになってしまった

ヨシ吉を釈放するとき 鬼のヘイ吉はヨシ吉に言った

てめえの了見は 今までのミノ吉時代の幹部と違ってなかなかてえしたもんだ それは認めてやろう

だから今回はお構いなしにしてやった だから二度と急ぎ働きはするんじゃねえぜ

一家の立て直しをする前に まず一家の連中の根性を叩き直すことが先決問題だ

とヨシ吉は思った

しかし ヨシ吉には気の置ける やりての手下がいない

今までの小汚い連中を掃き捨てることも大事だが もっと大事なのは 新しい信頼のおける手下だ

まず少なくとも5匹の信頼出来る手下が必要だ

ヨシ吉は 必死になって探し求めた しかし そういったねずみ材は 簡単には見つからない

みんな 帯に短し 襷に長しだ

やはり 長い急ぎ働きで まともなねずみ材がほとんど去って行ったのだ

ヨシ吉は どうすればいいのか 完全に自分を見失っていた