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第二十章 憎悪のアメリカ社会 ヨーロッパ社会が愛憎の交錯する人間社会であるのに対し、アメリカは憎悪一色のプラスチック人間社会である。 人間とは本来、愛憎入り乱れた生き方をするものだ。 四本足動物から二本足動物になった時に獲得した知性の負の遺産である。 人間は、知性の正の遺産によって他の生き物を圧倒し、地球上に君臨してきたが、他の生き物にはない生きる悩みを抱えざるを得なくなったのは、知性の負の遺産が原因である。 生きる悩みの最大が死に対する恐怖だ。 「生あるものは必ず死ぬ」という死の概念を持ったからであり、知性の負の遺産の最大が死の概念を持った(知った)ことである。 アメリカという国は科学万能の社会であり、知性の正の遺産だけを信じて、負の遺産を無視し続けた結果、憎悪一色のプラスチック人間社会に成り下がってしまった。 1989年12月のマルタ会談でゴルバチョフはブッシュに憎悪一色のプラスチック人間を感じた。 1945年2月のヤルタ会談でルーズベルトはスターリンと秘密協定を交わした。 身体障害者であり、車椅子生活をしていたことを人前では決して見せなかったルーズベルトも憎悪一色のプラスチック人間だった。 レーニンの意志とは裏腹な歪な共産主義独裁国家を目差したスターリンも憎悪一色のプラスチック人間だった。 ヤルタ会談とはドイツ敗戦後の処理についての話し合いであり、第二次世界大戦のきっかけであったポーランド問題が表向きの課題であったが、チャーチルを出し抜いたルーズベルトにとっては、新しい冷戦の相手であるソ連のスターリンと密約をするのが最大の狙いであったといえる。 ドイツ敗戦90日後にソ連の対日参戦、そして、日本領土であった千島列島、樺太をソ連領にすることの合意をしていたのである。 いわゆる「北方領土問題」の原因がヤルタでつくられたのだ。 更に、その後正式に発足した国際連合の投票方式について、アメリカ・ソ連・イギリス・フランス・中国の五カ国が拒否権を持つ常任理事国を認めたのも、ヤルタ密約である。 常任理事国だけが核を保有することができるという、不条理極まりない決定が為されたのも、畢竟、このヤルタ密約だと言っても過言ではない。 二十世紀後半の人類の悲劇をつくったのは、ふたりの憎悪一色のプラスチック人間によるものであることは間違いない。 東西冷戦が終結した後の世界は、憎悪一色のプラスチック人間社会であるアメリカに振り回されるようになっていった。 1989年12月のマルタ会談で、ソ連のゴルバチョフは、アメリカのブッシュ大統領を憎悪のプラスチック人間に感じた。 1945年2月のヤルタ会談では、ソ連のスターリンも、アメリカのルーズベルトも憎悪のプラスチック人間だった。 45年もの長きに亘って冷戦が続いたのは、二人の憎悪のプラスチック人間の所為だったが、45年間続いた冷戦を終結させたのは、ゴルバチョフがプラスチック人間でなかったからだ。 人間社会に起こる悲喜劇を国家・民族・人種や社会の所為に決してしてはならない。 一人の人間によって幸せな世界にもなるし、不幸な社会にもなる。 一人の人間の価値観によって、人間社会のみならず他の生き物の世界も大きな影響を受け、延いては地球にまで影響を与える。 地球上に存在するすべての物質、つまり、動物・植物・鉱物は有機生命体である。 化学では炭素を有する物質を有機物と言うから、炭素を含まない鉱物は無機物と人間が勝手に決めただけだ。 有機生命体とは炭素を含む生命体というのではなく、心を持った生命体のことであり、鉱物も心を持っている有機生命体である。 一方、人間でも心を持たない生命体は、たとえ炭素を有していても、無機生命体である。 憎悪のプラスチック人間とは心を持たない無機生命体だ。 二十世紀に入って人類の数は急増し、二十一世紀に入っても止まるところを知らない。 自然の食物連鎖の法則は人類に警告する。 “量を追えば、自滅する” いかなる生き物であっても大群が発生すると、待ち受けているのは集団自殺による自滅だ。 1972年のニクソンによる金本位制廃止と、それを受けて固定相場制から変動相場制へ移行した1989年の「プラザ合意」によって、世界は憎悪のプラスチック人間濫造工場と化してしまった。 それまでの人間社会にも拝金主義は存在したが、実業の伴った拝金主義だった。 今日の拝金主義は、虚業の上に成り立った拝金主義である。 「金(ゴールド)」は、その稀少価値を以て、如何なる国でも交換価値を有するが、「お金(ペーパー)」は、人間間の信頼関係で以て、交換価値が変化する。 基軸通貨とは、人間間の信頼関係が国家間の信頼関係まで拡大解釈された結果の概念だ。 1972年の金本位制廃止と1989年の変動相場制による「ドル安容認」は基軸通貨の消滅を意味する。 実質上の基軸通貨は消滅しているのに、ドルが依然基軸通貨として罷り通る。 如何なる経済行為でも、ドル紙幣を刷るアメリカが一人勝ちするのは当たり前だ。 畢竟、憎悪のプラスチック人間濫造工場と化してしまったのである。 「マネーゲーム」とは正に、「憎悪」の坩堝だ。 二十一世紀に入って、世界は超拝金主義のプラスチック人間粗製濫造工場と化した様相であり、それをリードするのが、冷戦に勝った憎悪のプラスチック国家アメリカであり、その後を追従しているのが日本である。 憎悪のプラスチック人間は代を重ねる毎に憎悪性と無機性を増長させる。 1989年のマルタ会談でゴルバチョフを震撼させたブッシュ大統領は、二十世紀最大・最長の冷戦を終結させたのも束の間、湾岸戦争に突入していった。 我が血を引いた息子にベトナム戦争の役務を逃避させた挙げ句に湾岸戦争突入である。 更に、ベトナム戦争の徴兵役務を逃れた男が、それから10年も経たない内にイラク戦争突入である。 憎悪のプラスチック人間は代を重ねる毎に憎悪性と無機性を増長させることを、皮肉にも証明した。 衆愚政治という言葉がある。 愚かな大衆による政治と言ってもいいだろう。 人口が急増した人間社会の民主主義政治とは、まさに衆愚政治の極みであろうか。 人類の大群発生によってねずみ講式に増える愚かな大衆が、民主政治で以て選ばれる政治家の質を逆ねずみ講式に低劣化させる。 この兆候が二十一世紀に入って、日本にも明確に顕れてきた。 2001年4月1日。 鬼神四郎が「国常立命(クニトコタチノミコト)」の降臨によって、日本という国を洗濯するよう命じられ、行動に移っていた時、アメリカでは既にプラスチック人間がまるで魑魅魍魎のごとく跳梁跋扈している時代に入っていたのである。 政治家を中心にお仕置きをしていた鬼神四郎だったが、経済界では日本も既にプラスチック人間が横行していたことに気づかなかった。 通称「ドラエモン」と称する若手実業家が時代の寵児のように出現し、マスコミも彼を「現代のヒーロー」と持て囃した。 古今東西において、棚からぼた餅のような「甘い話」は一切ないし、「甘い話」の陰には必ず犯罪が潜んでいるのが真理である。 二年足らずの内に、「ドラエモン」は数千億の資産家になっていた。 この頃の大泉内閣は、「構造改革」を旗頭にして民営化を促進していたが、保守派の反対で以て法案を参議院で否決されてしまった。 大泉金太郎は病的なほどの執念深さを持つ人間であり、離婚したのも、彼の執念深さに夫人が怖れを抱いたからであった。 法案を否決された怨みが、大泉の病的な執念深さに火をつけ、首相の権限で以て衆議院解散をし、総選挙に持ち込んだ。 愚かな大衆から多くの票を獲得するためには、「人気者」がどうしても必要だ。 大泉は「現代のヒーロー」である「ドラエモン」に目をつけ、保守派の代表格である亀丸守男の選挙区に刺客として送り込んだのである。 「ドラエモン」を筆頭に、更に愚かな大衆が持て囃す「人気者」を悉く刺客として送り込んだ。 結果、総選挙は大泉自民党の戦後史上最大の圧勝で終わった。 ところが、古今東西において、棚からぼた餅のような「甘い話」は一切ないし、「甘い話」の陰には必ず犯罪が潜んでいるのが真理である。 潜んでいた犯罪が頭を擡げ出したのは、総選挙後それほど時間が経っていなかった頃であった。 「現代のヒーロー」である「ドラエモン」の犯罪が一気に世間に吹き出した。 捜査当局が正式に動き出したことで「ドラエモン」の犯罪が表面化したが、実はその半年前から隠密裏に捜査していたのである。 総選挙後間もない頃から捜査当局は、政府自民党を筆頭に、財界、官界でも「現代のヒーロー」になっていた「ドラエモン」を犯罪容疑者と見なしていたということだ。 政官財とも如何にプラスチック人間の集まりであるかを如実に顕している。 「ドラエモン」の犯罪が次から次へと表面化する中で、政官財の連中は必死になって自己保身に走った。 その頃、鬼神四郎は「溝鼠掃討作戦」を展開して、日本の司法当局と通々関係にあった。 後に日本国民の愚かさに激怒した彼は、親友の力を借りて、日本という国を二度に亘り蹂躙させる行為までしたほど、愚かな国民に呆れ返っていた。 “あんな人気取りだけの選挙は無効だ!” “大泉に衆議院解散をさせ、一からやり直しだ!” “現国会が法案化したものも、すべて無効だ!” 四郎の鶴の一声で、一年も経たない内に衆議院は解散して総選挙に入ったが、その結果、自民党の惨敗であったことは衆目の予想するところであった。 子亀ブッシュと精神異常者大泉とのスクラムに皹が入りだしたのは、この事件の直後からであったことは言うまでもない。 2009年5月3日は日本国憲法改正の公布即施行という記念すべき日だが、1985年の「プラザ合意」以後の日本は、アメリカの属国に完全に成り下がっていた。 「プラザ合意」の張本人である中曽根・竹下ラインを引き継いだのが大泉金太郎だ。 レーガン大統領の尻馬に乗ったブッシュの徴兵忌避の息子と結託したのが大泉金太郎だ。 「鬼の掟十七ヶ条」を基にして、新しい日本の憲法を草案していた鬼神四郎は、500人の国会議員の中263人まで占めている世襲議員たちを逆に恫喝して、2009年5月3日新憲法施行を目差していたのだが、その世襲議員の頂点に立っていたのが大泉金太郎だった。 2008年11月3日。 憲法改正の是非を問う国民投票日だった。 国民の過半数の賛成が得られれば、新憲法が2009年5月3日に施行となり、アメリカによって62年間押しつけられてきた屈辱の憲法から、自前の憲法になるのを決定づける大事な日であった。 結果は、投票率38%、開票率30%の段階で憲法改正反対票が過半数を超え、憲法改正案は否決されてしまったのである。 特に酷かったのが大阪で、投票率25%で、20代若者の投票率は1%以下だった。 大阪の大人4人の中の1人しか、更に、大阪の若者100人の中1人しか、自分の国の行く末を占う大事な投票に関心を持っていなかったのである。 「なんでや!」 さすがの鬼神四郎も絶叫した。 それから数日後、大岡賢治から連絡が入った。 今回の国民投票にはからくりがあったらしいと言うのだ。 「どういうことだ。賢治?」 四郎が訊くと、「どうも、大手の新聞社らしいんですが、今回の憲法改正を絶対阻止せよとの大きな力が働き、その命令に従った奴らが、投票に行く人間を餌で釣ったらしいんです。つまり、若者の層に新聞では目立つのでインターネットを利用して、11月3日に若者が飛びつくようなアトラクションを催したようです。それに釣られた若者はみんな投票に行かずに、そちらの方に行ったようです」 賢治の説明に納得した四郎は、「その新聞社が表に出るようなへまはしないだろうな」と呟いた。 「はい、その通りです。インターネットは既に消され、ぼくの仲間がそれを見ていて、コピーしていたもんですから確認しましたが、どこの会社かも分かりません。ただ全都道府県に及ぶイベントをうたい文句に、参加したらかなり高価な品物がもらえると宣伝してありました。これだけのことをするには余程の資金がないと出来ません。すでにイベントに関わった業者に当って調べていますから、もっと詳しいことは分かると思います」 賢治も慌てている様子だった。 四郎に恫喝されていた世襲議員たちの頂点に立っている大泉金太郎が、「ドラエモン」の件で蜜月の関係に皹が入った子亀ブッシュを忖度してやったことに、四郎は気づいていなかった。 況してや、「現代のヒーロー」になっていた「ドラエモン」の背後にいた黒幕が、子亀ブッシュや大泉金太郎をも操っていたことなど・・・。 賢治の話を聞いていた四郎は、嘗て国常立(クニトコタチノミコト)と交わした話のことを思いだした。 それは高野山での修行のときだった。 高野山を開いた空海の真言宗は、実は仏教ではなく原始キリスト教から影響を受けているらしい。 空海が中国の長安に修行に行ったときに学んだ恵果和尚は、チベット仏教の継承者だった。 チベット仏教は、その昔、釈迦の教えを最も忠実に後代に伝えてきた仏教である。 原始仏教とは、実は、ユダヤ教の本質を伝承しようとしたイエスの教えを引き継いだ原始キリスト教の影響を受けているというのだ。 原始ユダヤ教も原始キリスト教も原始仏教も根は同じであるらしい。 更にもっと驚くべきことは、原始日本神道も根は同じだと国常立(クニトコタチノミコト)が四郎に教えたのだ。 空海が平安京から遠い高野山を開こうとしたとき、資金的応援をしてくれたのがユダヤの血を引く帰化人であり、聖徳太子の信頼を一身に受けた秦川勝の末裔であった。 爾来、この国に古代ユダヤの血を引く渡来人や帰化人が大きな影響を与えてきて、太平洋戦争敗戦のときにも暗躍したらしい。 東京裁判でA級戦犯だったある新聞社の社長が、GHQに命を救われ、その後の日本のテレビ界に多大な影響を与えた。 GHQ総司令官の懐刀と自他共に認めていたホイットニー准将をして、「この国をして、二度と戦争を起こし得ないような人間に教育しなければならない・・・」と言わしめた『3S』政策の一環を担わされたのである。 『3S』とは『スポーツ・スクリーン・セックス』のことで、『スポーツ・スクリーン・セックス』に現を抜かす腑抜け国民に仕立て上げようというわけだ。 日本人を堕落させるのが目的であったらしい。 そこにも天津神の国津神への封印の狙いが関連しているらしく、日本の歴史は天津神と国津神の相克の歴史だと言える。 『多分、あの新聞社だろうな』四郎が呟いた。 「知っているんですか?どの新聞社か」と賢治が驚いていると、「断言は出来んが、大日本新聞だと思う」と四郎は言って、高野山の修行時代のことを話した。 「あの新聞社は確かに、僕なんかからみても何とも言えない嫌味な癖を持った新聞社ですね」と言う賢治の表現がまさに適切に言い表していた。 「他の新聞社もみんな、マスコミ独特の見下ろしたような・・・、自分たちは聖域にいるから、一般民衆は手出し出来ないといった雰囲気を持っているが、あそこだけは、また一味違う。しかも実に嫌な味を持ったところだ。それは日本人では出せない味だ。多分、その背景にはさっき言ったような理由があるからだと思うよ。しかし、そんな誘惑に乗る阿呆がいっぱいいるから、それが読まれているんだ。どっちもどっちだ」と四郎は吐き捨てるように言った。 憎悪のプラスチック人間は、アメリカだけではなく、この日本にも存在しており、選りにも選って日本丸の舵を取っている男が、アメリカの属国となる旗を振っていたことに、鬼神四郎は気づいていなかったのである。 |