第十六章  大臣復帰

村上組長は森組の若頭や若頭補佐のボディーガードにもなれない下端の組長だった。
そして、美香は村上組長の娘であった。
首藤から電話を受けた森は、すぐに村上を呼びつけ、娘の美香と手下のチンピラの仕業であったことを、ビデオフィルムで見せらつけられ、けじめをつけるよう指示された。
この仕業に乗せられたマスコミ関係者も、首藤に呼びつけられ、適切な収拾をするよう命令された。
翌朝、全新聞社が、官邸の了解も取らずに、スクープとして、正太郎の一件を覆す事実関係を公表すると共に、宇都宮一郎元大蔵大臣の潔さを絶賛し、国民のほとんどが、アンケート結果では、一郎の大蔵大臣復帰を望んでいると一面記事に掲載した。
『アンケート調査なんかする時間もなかったくせに、いい加減な奴らだ!』
正二郎は呟いた。
そして、新聞に一切掲載されなかったが、村上組の例のチンピラは行方不明になり、村上組は廃業に追いやられた。
廃業に追いやられた暴力団の末路は悲惨である。
美香は公には出されなかったので、退学処分にはならなかったが、自業自得の罰を与えられたのだ。
しかし強い女は、どこまでも強い。
事件が落ち着き、一郎も名誉と大臣職を取り戻すことが出来た頃に、美香が宇都宮家の門の前にやって来た。
その顔付きは以前にも増して、挑戦的であった。
堂々と門のチャイムを押した美香に、対応したのは母親の栄子だった。
「村上美香と申します。正二郎さんにお会いしたいのですが・・・」
村上美香と聞いても、栄子は一郎の一件との関わりがあるとは全く思っていなかった。
「正二郎は、まだ帰っておりませんが・・・」
栄子の返事に、美香ははっきり言った。
「それじゃ、中で待たせて頂きます」
余りにも強引というか、厚かましい態度に圧倒された栄子は、言われるままに、美香を応接間に通そうとしたら、美香が言った。
「すみません。リビングルームで待たせてください」
美香の言われるままに、何が何だか解らない栄子は、「ええ、それじゃこちらにどうぞ」と美香をリビングルームに通した。
あの屈辱感を正二郎に味わわされたテレビゲームをやった場所だ。
『ここで、あの怪物坊やと、もう一回ゲームをするんだ!』
と呟く美香の表情は輝いていた。