Chapter 209 チックタック(四苦八苦)

わたしたちは気楽な人生を送ることができずに四苦八苦しています。
四苦八苦はチックタックという音が、その語源です。
チックタックとは、時計の振り子が動く音で、振り子が一方の端から他方の端へ向かって動く様を、チックタックという音であらわしているのです。
チックタックチックタック・・・・・・。
まさに人生は四苦八苦四苦八苦だよ・・・と言っているようです。
四苦八苦の人生から解放されたいのであれば、チックタックという音を止めればいいのです。
つまり、時計の振り子を止めればいいのです。
時計の振り子は、右に向かえば左に向かおうとする力を蓄え、左に向かえば右に向かおうとする力を蓄えることによって動き続けるのです。
そして時を刻みます。
時を刻む即ち時間が流れることで過去、未来という観念が生れ、わたしたちの四苦八苦の原因である不安、悩み、取り越し苦労などが発生するのです。
その原因が振り子のチックタックであるわけです。
振り子が止まれば、時も止まります。
従って、過去も未来もない、あるのは、『今、ここ』だけであって、『今、ここ』にさえいれば、チックタックの音が消えるように、四苦八苦の原因である不安、悩み、取り越し苦労が解消されるのです。
振り子が止まるということは、真ん中に静止することです。
静止するとチックタックの音は消え、沈黙の世界があらわれるのです。
動くと音が出る。
静止すると音が消える。
運動の光と音(喧騒)の世界であるわたしたちの宇宙。
しかし、静止の暗闇と沈黙の世界こそ、わたしたちが本来いた世界であるのです。
そして、いつでも本来の世界に戻ることができるのです。
それは、振り子を止め、チックタックという音を消し去ることで、静止の沈黙の世界に入っていくことができる。
ではどうしたら振り子を止めることができるのか。
振り子は、右に向かうと左に向かおうとする力を蓄える、左に向かうと右に向かおうとする力を蓄える。
こういう力をモーメント(Momentum)と言います。
モーメント(Momentum)はMomentが語源で、哲学用語で「契機」「きっかけ」といった意味を持つ言葉です。
その力が振り子を振る原動力になっているのです。
この力を外から増幅させるためにぜんまいがある。ぜんまいを巻くとぜんまいが緊張してピンと張る、その張る力で振り子自体が持っているモーメントに力を加えるわけです。
従って、ぜんまいを巻かないと、振り子は次第に止まっていきます。
わたしたちができることは、ぜんまいを巻かないこと、Momentum「きっかけ」にそれ以上の力を与えないことです。
それでは、ぜんまいを巻かないようにするには、どうしたらいいのか。
わたしたちは、自分独りだけの劇場で、目が醒めると3階から背景画面の無制限連続バラバラ1本立て映画を観て、眠ると5階で再び、今度は予告編や宣伝が途中である無制限連続バラバラ一本立て映画を観ることを一年365日休むことなく繰り返しておるのです。
4階に立ち寄らずに3階と5階を往復していることこそが、ぜんまいを巻いていることに外ならないのです。
ほんの少しでいいから、4階に立ち寄って、そこにも用意されてある自分だけの座席に座ってみると、そこからは背景画面だけではなく、3階、5階から見ることができなかった自分の人生の実舞台が見えることに気がつくのです。
『ああ、これが自分の本当の人生だったんだ!』と気づくのです。
4階の席に座って、実舞台と背景画面の映像を観ると、3階と5階を往復していた今までの自分が、本当の「わたし」ではなく、映像に投影された虚像の「私」であることを思い知らされます。
4階に立ち寄ることが、ぜんまいを巻く作業を止めることで、それを継続しているといつしか3階と5階を往復することが嫌になり4階にどっしりと落ち着く瞬間(とき)がやって来ます。
その瞬間(とき)、振り子は真ん中に止まって、時間も止まるのです。
4階という、時間が止まった世界−4次元世界は時間の最初から最後まで包含した世界ですから、時間の流れの無い世界と言える−は、朝目が醒めた瞬間と、夜眠りに就く瞬間という、ギアシフトの際のニュートラルは、3階と5階の間にある4階の踊り場である深淵(Abyss)の世界であるのです。
先ず、3階と5階の間のギアチェンジをする際に、ニュートラルポイントで一旦止め、ダブルクラッチを使うと、4階の踊り場という深淵(Abyss)を垣間見ることができる。
そしていつしか垣間見るだけだったのが、4階そのものの劇場に入ると、自分の席があることに気づくのです。
従って、先ず朝目が醒めた瞬間と夜眠りに就く瞬間だけは、ボッとせずに意識していることです。
それが振り子のぜんまいを巻くことを止めることになります。