Chapter 243 欲望の進化

人間は、他の生き物のような肉体的な欲望−本能的欲望−だけではなくて、心理的な欲望−知性的欲望−を持っています。
本能的欲望とは、食欲、性欲、子孫保存欲、支配欲−食欲、性欲、子孫保存欲が合体した結果の総合欲−といったものです。
知性的欲望とは、金銭欲、名誉欲、権力欲、知識欲、悟欲などがあります。
特に悟欲は心理的欲望の中でも最も微妙且つ巧妙な欲望で、自己の内面をしっかり見つめる客観性を持っていないと厄介な代物になる危険性があるのです。
宗教に耽ったり、ねずみ講ビジネスにのめり込む人たちは、自身は気づいていないが悟欲という心理的な欲望が働いた結果であり、女性にこの傾向が強い。
夫婦間での揉めごとは、恰も本能的欲望である性欲が原因のように勘違いされがちですが、実は心理的欲望の相克が最大の原因であるのです。
「性格の不一致」という、実際には「性の不一致」が、離婚の最大理由だと、ひと昔前にはよく言われましたが、最近ではまったく言われなくなりました。
離婚率が低い時代のつくられた理由が、「性格の不一致」、「性の不一致」であったのです。
離婚率がうなぎ上りに上昇した昨今では、「性格の不一致」は「異性間の不一致」になってしまったようです。
つまり男と女の立場欲と申しますか、男女同権意識の強さが生んだ新しい心理的欲望であるのです。
男社会が基本のこの世の中ですから、現代人だけにある新しい立場欲は、女性に強く働いているのは必然であるわけです。
「性の不一致」が原因の離婚は、殆どが男性側からの離婚要求でしたが、「異性間の不一致」になってからは、女性側からの離婚要求が圧倒的に多くなっているのは、まさに男社会のこの世の中であることを逆説的に示していることに、女性たちは早く気づくべきなのです。
若しも、この世が女社会であれば、女性から、「異性間の不一致」問題は起きない筈です。
結局の処、男社会と女社会の闘いの結果が、「異性間の不一致」問題として浮上するわけで、ある男とある女の固有の問題ではないことを洞察しなければこの現象を理解することはできません。
つまり昨今の離婚率の上昇理由は、個人の問題ではなくなっているのです。
明らかに社会問題になっており、結婚制度自体が崩壊の危機に晒されているのです。
離婚の為の結婚では、結婚は無意味なものになってしまいますが、まさに現代日本社会は、その様相を呈しています。
欧米社会の離婚率の大きさの原因は、男社会が女社会を圧倒した結果であり、男側からの離婚要求が圧倒的に多いのです。
国の先進性において一歩も二歩もリードしている欧米社会ですから、遅かれ早かれ日本も男社会と女社会の闘いの結果が出るでしょう。
現代日本の女性が強くなっている風潮は、男社会と女社会の闘いの一過程であり、その結論は欧米社会に既に出ていることを知らなければなりません。
2025年には、日本の人口は、現在の1億2千万人から9千万人に減少すると言われています。
そして4千万人いる、現在の65才以上の高齢者が2025年には6千万人、つまり3人に2人が65才以上の高齢者になる。
その半数の3千万人づつが65才以上の男性と女性の社会になるのに、離婚率がますます上昇して行く日本は一体どういう国になっているのでしょうか。
残念ながら、女性にとっては悲惨な国になっているでしょう。
本来の本能欲に汲々とする男女関係であれば、社会の崩壊は避けることができますが、心理的欲望の中でも、悟欲と同質の立場欲が原因の男女関係になった社会の崩壊を止める手段は、なかなか困難なものがあると言わざるを得ません。
知性的欲望がその原因ですから、やはり個人の問題に立ち帰らなければならないでしょう。
知性が織り成す問題は知性で解決するしか道はないのです。