Chapter 504 国家のない社会

自然界では、食物連鎖という掟が厳然と働いておりますが、わたしたち人間社会にも、この法則は作用しています。
人間社会も否応なしに自然界に組み込まれていることを、わたしたちは認識しなければなりません。
人類の文明社会は、ゲマインシャフト(共同社会)からゲゼルシャフト(利益社会)への変遷の歴史の中で近代社会までやって来た。
組織の時代から個人の時代へ変化するということは、ゲゼルシャフト(利益社会)からゲマインシャフト(共同社会)へ回帰することであり、これこそ自然界の食物連鎖の法則に外なりません。
しかもその法則の中に二元論が厳然と働いているのです。
欧米社会がリードしてきた近代社会は、ゲゼルシャフト(利益社会)の極致として資本主義思想を、ゲマインシャフト(共同社会)の極致として共産主義思想を生み、それが東西冷戦を引き起こした。
それが表向きの理由であります。
理論の世界では確かにそういう一面があったことは確かでしょう。
理論の世界での啓蒙思想は、自由主義思想と共存し得るものであったが、支配と被支配という政治力学の世界で巧く利用された。
理論の世界での共産主義思想は、資本主義思想と表裏一体のものではなかったが、政治の世界で巧く利用されたと言ってもいいでしょう。
表向きの対立に決着がついた結果、現代社会は利益を追求することが当然のこととされる社会になってしまった。
すべての分野で利益至上主義つまり拝金主義思想が根づいてしまったのが現代社会であります。
そして、利益を追求すると必ず辿り着くのが独占という考え方です。
政府・行政・官営企業つまり国家権力は独占を許されているが、民営企業は独占を許されていません。
利益を追求する民営企業に独占を許すと、利益の極大化に走る結果、需要・供給のバランスが崩れるからであるという理由からでありますが、国権という絶対的な独占の下に税という極大利益を上げている国家こそ最大の利益追求組織であることを忘れてはなりません。
税という概念は利益なくして存在し得ません。
そういう点では、利益と税は二元要因であると言えます。
従って、利益の存在しない所には税も発生しません。
日本という国家を企業に例えれば、国家予算がおよそ80兆円であり、税収入がおよそ40兆円でありますから、売り上高40兆円の超大企業でありますが、毎年40兆円の赤字を出し、累積赤字は1000兆円を超している瀕死の状態であるのです。
民間企業であればとうに倒産している。
税収入というのは、市場つまり国民に財とサービスを提供する代替として得ているものです。
国民に財とサービスを提供する機関が各省庁と自治体であります。
結局の処、利益と税は同質のもので、利益という形で循環しているのが民間企業という組織であり、税という形で循環しているのが国家という組織であるだけです。
従って、国家もない、企業もない社会というものは、利益と税という二元要因を超えた概念の社会でなければなりません。
国家が国民に税の代替として与える財とサービスの中で、殆どがサービスであります。
軍隊で以って外敵の侵略から国民を守るのも、国家が国民に与えるサービスであります。
新しい時代になると、これらのサービスが殆ど無用になる。
国家のない社会の所以であります。