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Chapter 508 新しい言葉 科学が志向するものにはふたつの面があります。 ひとつは研究であり、もうひとつは開発であります。 人知の及ばない分野を人知の及ぶ分野にするのが研究であるのに対し、存在しないものを創造するのが開発であります。 例えば、原子核の核分裂や核融合といった量子飛躍する際に猛烈なエネルギーが発生することを量子力学の学者が発見したのは、人知の及ばなかったことを人知の及ぶものにした研究でありますが、それを利用して原爆や水爆を開発した科学者と、莫大なエネルギーを要するが、人間の精神面においても量子飛躍つまり変身する方法を開発した科学者もいた。 研究レベルでは純粋で無色透明な気持ちであったものが、開発レベルでは、まるで正反対のものが生まれてくる。 開発とは、この世的な面つまり三次元世界のものであるのに対し、研究というのは次元を超えたところのものであることを示しているのです。 運動の光と音(喧騒)の世界に生きている人間の心の中に潜んでいる天使と悪魔の両面性が現れた結果であり、特にこの世的になると悪魔の面が強く出るわけですが、本来人間は両面性を持って、この世に生まれ落ちて来たわけではありません。 生と死が、運動の光と音(喧騒)の世界と静止の暗闇と沈黙の世界の登龍門と考えられる所以であります。 生まれてきた時は純粋無垢な気持ちであったのですが、母親からの躾という条件づけを手始めに、学校教育など社会からの条件づけの攻撃を受けた結果、天使・悪魔の二面性を有するようになったわけです。 つまり、善悪、強弱、貧富、賢愚・・・幸・不幸、天国・地獄そして神・悪魔といった二元要因を知るに至ったわけで、そのことを以って人間の人間たる所以であると思われているのが現代社会であります。 つまりゲゼルシャフト(利益社会)の極致である拝金主義社会であります。 新しい時代は、前の時代のアンチテーゼを主題にして生まれる。 脱拝金主義社会がネオゲマインシャフト(新共同社会)つまり共生社会と言っていいでしょう。 一元論から二元論への進化が、ゲマインシャフト(共同社会)からゲゼルシャフト(利益社会)への進化とすれば、二元論から三元論への進化が、拝金主義社会から脱拝金主義社会への進化と言っていいでしょう。 それでは、善悪、強弱、貧富、賢愚・・・幸・不幸、天国・地獄そして神・悪魔といった二元要因の言葉はどうして生まれたのか。 他の生き物にも言葉がありますが、彼らの言葉には、善悪、強弱、貧富、賢愚・・・幸・不幸、天国・地獄そして神・悪魔といった言葉はありません。 彼らの言葉は、本能欲から発する言葉です。 人間の子供の発する言葉も、他の生き物と同じで本能欲から発する言葉だけです。 赤ちゃんが泣くのは、「お乳を欲しい!」という言葉を発しているのですが、「お乳」という言葉、「欲しい」という言葉を発しなくても、「オギャア!」と発するだけで、母親はわかるのです。 他の生き物の言葉はみんなこのレベルなのです。 現代人間社会には、およそ5000種類の言語があると言われていますが、「お母さん」という言葉の基本音は「MA」であり、5000種類の言語すべてが、「MA」で「お母さん」であります。 つまり人間の言葉の原点は、やはり他の生き物と同じ本能欲から発する言葉であることを示唆しているのです。 善悪、強弱、貧富、賢愚・・・幸・不幸、天国・地獄そして神・悪魔という二元要因を生んだ人間の言葉を、もう一度遡るヒントは、本能欲から発する言葉を再研究することであり、「はじめに言葉ありき」と書かれてある旧約聖書の言語は古代アラム語つまり古代ヘブライ語であり、ヘブライ語は母音が無い文字であり、状況に応じて母音を発音する言語であります。 つまり他の生き物と同じ本能欲から発する音が、実は母音であるのです。 新しい時代の共生社会には、それに適した言葉が必要なようであります。 口で発する言葉は音つまり五感を通じてのものですが、「想い」で発する言葉は音で発するものではありません。 「阿吽(あうん)の呼吸」の言葉であります。 「阿吽(あうん)AUM」こそ母音の基本であり、「お母さん」が「MA」である所以であります。 |