Chapter 620 朝・昼・夜・春・夏・秋・冬

人の一生は、目が醒めている所謂現実の人生、夢の人生、眠りの人生の三つのシフトつまり三つの形態(ゲシュタルト)によって構成されていると言っていいでしょう。
三つのシフトつまり三つの形態(ゲシュタルト)が一日を単位として繰り返されています。
更に春・夏・秋・冬の四つのシフトつまり四つの形態(ゲシュタルト)である四季が一年を単位として繰り返されています。
従って人の一生は、時間的には一日と一年という二つのシフトつまり二つの形態(ゲシュタルト)の繰り返しであり、空間的には覚醒・夢・眠り・春・夏・秋・冬の七つのシフトつまり七つの形態(ゲシュタルト)の繰り返しであると捉えると整理し易くなります。
一生の核になるのは、『今、ここ』であることは言うまでもありませんが、『今』と『ここ』を同時に確定することができないのが、運動の光と音(喧騒)の宇宙に生きているわたしたちの掟であります。
拙著「神はすぐ傍」で時間の基本は一日と一年だけであり、月・週・時間・分・秒は人間が勝手に捏造した産物であり、しかも一日と一年の関係も太陽と地球との相対性によって決まっているだけで、他の惑星の一日と一年には固有の決まりがあると申しました。
つまり時間という概念も人間が勝手に捏造したものであり、時間イコール一日・一年ではないということです。
一日とは地球が一回自転することであります。
朝になり昼になり夜になり再び朝になる繰り返しと言ってもいいでしょう。
一年とは地球が一回公転することであります。
春になり夏になり秋になり冬になり再び春になる繰り返しと言ってもいいでしょう。
他の生き物つまり動物も植物も鉱物もみな、この繰り返しの中で一生を送っているのであり、いま何歳だとか、いま何月だとか、いま何曜日だとか、いま何時何分何秒だとかといった時間で生きているのではありません。
わたしたちは時間を知らぬ間に絶対的なものとして扱ってきたようです。
アインシュタインによって時間と空間が相対的だと言われても、実際にはニュートンが定義した絶対性の時間としてしか捉えることができていないのです。
ニュートンがりんごの実が木から落ちるのを見て地球に重力があることに気づき、引力の法則を発見したように、コロンブスの卵的発想をしない限り、時間の定義などできないのです。
況してや、飛行機に乗る人の時計と立ち止まっている人の時計の進み具合が違うなどと、アインシュタインが気づいたような感覚でわたしたちは日々を生きているのではないのです。
ニュートン以前から、人類は時間に対する意識を持っていましたが、時間としてではなく冒頭で申しましたように、一日・一年の感覚だけであり、朝・昼・夜・春・夏・秋・冬の七つのシフトつまり七つの形態(ゲシュタルト)の繰り返しとして捉えていただけであります。
絶対的な時間も、相対的な時間も無いということなのです。
『今』という時間軸で以って一日・一年があるだけで、『ここ』という空間軸で以って朝・昼・夜・春・夏・秋・冬があるだけのことで、それ以外のことをすべて時間で以って片付けてきたのです。
一日・一年という『今』を原点にした時間軸に立って、朝・昼・夜・春・夏・秋・冬という『ここ』を原点にした空間軸に投影(見る・聞く・匂う・味わう・肌で感じる・想う)することで以って生きていると言ってもいいでしょう。
一日・一年という時間軸の原点である『今』に立っているのが本当の自分である「わたし」であって、朝・昼・夜・春・夏・秋・冬という空間軸の原点である『ここ』に投影された像を自分だと思っているのが複数の「私」であります。
記憶が時間ではなく空間であると申しましたのは、わたしたちが依って立っているのは、『今』であり、『ここ』ではないからで、記憶を一日・一年の時間軸ではなく朝・昼・夜・春・夏・秋・冬という空間軸上の景色で憶えている所以であることが、『今』に立っており、『ここ』に立っていない証拠であります。
実在するものは見えない・聞こえない・匂わない・味わえない・肌で感じない・想えないのであります。
投影しているものだけが見える・聞こえる・匂う・味わえる・肌で感じる・想えるのであります。
実在する自己は五感や「想い」で認識できるのではなく、映像に過ぎない他者しか五感や「想い」で認識できないのです。
『今』という時間軸の原点に立っているわたしたちは、一日や一年を意識して生きているのではなく、朝・昼・夜・春・夏・秋・冬という『ここ』を意識して生きているということであります。
『今』を生きているわたしたちは、朝を意識しているのか、昼を意識しているのか、夜を意識しているのか、春を意識しているのか、夏を意識しているのか、秋を意識しているのか、冬を意識しているのか、それは個人の固有の問題であります。
わたしは『今』、秋の朝を意識して生きているのであります。