Chapter 640 真の人間解放

支配・被支配の二層構造社会が人間社会の常でした。
その中で時間だけは、支配者側にも、奴隷である被支配者側にも平等でした。
一日24時間、一年365日は支配者に対しても、奴隷に対しても同じです。
旧約聖書のYHWHの神は言います。
“あなたがヘブライ人である奴隷を買うならば、彼は六年間奴隷として働かなければならないが、七年目には無償で自由の身となることができる。もし彼が独身で来た場合は、独身で去らねばならない。もし彼が妻帯者であった場合は、その妻も共に去ることができる。もし主人が彼に妻を与えて、その妻が彼との間に息子あるいは娘を産んだ場合は、その妻と子供は主人に属し、彼は独身で去らねばならない”
更に旧約聖書のYHWHの神は言います。
“人が自分の娘を女奴隷として売るならば、彼女は、男奴隷が去るときと同じように去ることはできない。もし主人が彼女を一度自分のものと定めながら、気に入らなくなった場合は、彼女が買い戻されることを許さねばならない。彼は彼女を裏切ったのだから、外国人に売る権利はない”
更に旧約聖書のYHWHの神は言います。
“もし、あなたがわたしの民、あなたと共にいる貧しい者に金を貸す場合は、彼に対して高利貸しのようになってはならない。彼から利子を取ってはならない”
聖書をバイブルとするユダヤ教・キリスト教・イスラム教の人たちは、この神を信じているのです。
世界の人口63億人の中、ユダヤ教徒・キリスト教徒・イスラム教徒の総数はおよそ半分を占めており、世界の人々の半分が、奴隷の売買を認め、男と女の差別を許し、仲間から金利を取ることは禁ずるが、仲間でない者から金利を取ることを許す高利貸し業を認める神を信じているのです。
人間社会から人種差別や不条理そして戦争が絶えないのは、このような神を人間の少なくとも半数が信じているのだから当然でしょう。
近代社会をリードしてきた欧米社会とは、まさにこの神を信じている世界の半数の人たちで成り立っているのです。
そしてその神は更に言っているように聞こえないでしょうか。
“時間だけは、主人にも奴隷にも、男にも女にも平等に与えられている。それはわたしは憐れみ深いから”
人種差別も不条理も戦争も認める神が、時間だけは平等に与えるというわけです。
つまり唯一平等なのは時間だけだというわけです。
わたしたちは、よくよく考えなければなりません。
人種差別もない、不条理もない、戦争もない人間社会ならば、平等な時間の概念など不要であることに気づかなければなりません。
人種差別をし、不条理が罷り通り、戦争が絶えない人間社会を維持することによって、支配者が奴隷を支配する有効な餌として、平等な時間の概念が必要であるのです。
インドで古くから存在するカースト制度という差別が、輪廻転生という概念をつくったのも、支配者が奴隷を支配するのに有効な餌であったからです。
真の共産主義とはおよそかけ離れた(似非)共産主義に見せかけるために、マルクスが捏造した社会主義思想が、特権労働貴族階級による永続的な支配の絶対手段である世襲・相続を堅持するための餌として、私有財産禁止を打ち出したのも同じ理由であります。
差別をしたいから、差別しないものをつくるのです。
時間や輪廻転生や私有財産禁止−世襲による権力の維持によって私有財産禁止は実質失効する−は概念つまり考え方だから、いくら与えても減りはしないからでしょう。
支配者は支配する論理を知っているのです。
旧約聖書のYHWHの神は更に言っているように聞こえないでしょうか。
“奴隷からすべてを奪ってはいけない。支配者が損をしないものをつくって、それを餌として彼らに与えておけば、彼らはおとなしくしている”
インドのカースト制度は更に言っているように聞こえないでしょうか。
“この世に奴隷として生れても、一生懸命奴隷として主人のために働けば、次に生れ変わる時は奴隷から解放される”
平等な時間の概念は、支配者にとって奴隷を支配する上での極めて有効な餌であるのです。
その結果、わたしたち奴隷は、“Time is Money(時は金なり)”の拝金教に嵌りこみ、金=時間の奴隷になってしまい、自ら四苦八苦の人生を選択しているのです。
人種差別やいろいろな不条理そして戦争のない人間社会を本当につくりたいなら、わたしたちは先ず金=時間の奴隷から解放されなければなりません。
それが真の人間解放であります。