Chapter 660 音(喧騒)の世界

現代先進社会は、支配・被支配二層構造が高じた結果、精神的にも二層構造型になってしまい、わたしたち現代人は病的な程の分裂症状を来しています。
分裂症状が文明度と比例する理由であり、他の生き物の大脳皮質は一枚構造−大脳古皮質のみ−であるのに対し、人類は二枚構造−大脳古皮質と新皮質の二層になっている−になった時から分裂症状がはじまったのです。
平たく言えば、他の生き物は本音だけで生きているのに対し、人類は本音と建前で生き分ける−分けるそのものが分裂行為になる−ようになり、その兆候は近代になってから激しくなり、特に二十世紀に入って一気に加速したのです。
それはまさしく、人口の増加問題と併走している様相であります。
二十世紀までの人口の増加は文明度に比例したのですが、二十世紀後半から二十一世紀に入ってからは、人類の分裂症状が開発途上国や未開発国にまで蔓延していることが最大の原因になっているのです。
異常発生したアリやイナゴの大群の行動様式が、普段は極めて整然としているのに対し、分裂気味になっている点からも窺い知ることができるのです。
精神の分裂化は本能欲を亢進させ、異常な食欲と性欲を催させるのです。
他の生き物は、一年中交尾はせず、春・夏・秋・冬の特に春の季節若しくは秋の季節だけ交尾をします。
他の生き物は、一日中食事はせず、朝・昼・夜の特に夜だけ一回食事をします。
人間だけが一年中交尾をし、一日三回以上食事をします。
自然の摂理からすれば、人間の行動様式は明らかに異常事態であります。
一年に一回の交尾の季節があり、一日に一回の食事の季(とき)がある自然界に比して、一年中交尾をし、一日中食事をする人間が異常発生するのは当然の帰結であります。
根本原因は、精神の分裂化つまり本音と建前で生き分ける習い性にあると言ってもいいでしょう。
文明の最先端を走るアメリカの国民の90%が不眠症に陥っていると言われ、その後を追っているのが日本であり、遂に日本でも睡眠薬が市販されるようになったことがその証左であります。
睡眠薬が市販されるようになると犯罪が激増するのが当然です。
麻薬が犯罪を生むのと同じ現象なのです。
麻薬は分裂した精神を一時的に解消してくれるものであり、睡眠薬は不眠症を一時的に解消してくれるものであり、薬が切れると分裂症状や不眠症状は更に激しくなるつまり中毒症状を来すのです。
ところが、中毒症状を来さない睡眠薬を開発したなどと、薬品会社は化学者と結託して嘯く始末で、拝金主義も極まれりの様相であります。
近い将来には麻薬も公に市販されるように間違いなくなるでしょう。
人類がどんどん分裂症状に陥っている。
一万年余りの人類の歴史を貫いてきた支配・被支配二層構造社会が、精神をも二層構造にしてしまったのが原因であります。
支配者は被支配者つまり奴隷の前では本音を出しません。
彼らの価値観は生・死、オス・メス、善・悪、強・弱、賢・愚、貧・富、幸・不幸、天国・地獄の十六通りの中の生・オス・善・強・賢・富・幸福・天国の「考え方」にあるからです。
被支配者つまり奴隷は支配者の前では本音を出しません。
彼らの価値観は生・死、オス・メス、善・悪、強・弱、賢・愚、貧・富、幸・不幸、天国・地獄の十六通りの中の死・メス・悪・弱・愚・貧・不幸・地獄の「在り方」にあるからです。
「在り方と考え方」が混在している状態を分裂状態と言うのです。
分裂状態を解消するには、「全体と部分の相対性の法則」を自覚・体現することにあるのです。
「二元論」、「全体と部分の相対性の法則」、「在り方と考え方」がそれぞれ一部共有しながら一部独立しているのが、運動の光と音(喧騒)の宇宙であるわたしたちの世界である故に難しいのであり、音(喧騒)の世界である所以です。