Chapter 920 死の概念を持つ生き物・人間

自己同化(Self-identification)をするためには、言葉が要ります。
自我意識(エゴ)は自己同化(Self-identification)によって生じますから、言葉が自我意識(エゴ)を生んだと言っても過言ではありません。
言葉=知性である所以です。
知性とは大脳皮質(Cortex)が二層構造になった結果生じたものであることは何度も述べました。
弱き生き物・人類が外敵から身を守るためには、視界を広くして敵よりも先に察知して難を逃れるしか術がなかった。
視界を広くするためには目線(視線)を高くするしかないわけで、結果、四本足から二本足動物になった。
ホモ・エレクトス(原人)の誕生であり、五十万年前の人類の祖先の誕生であります。
四本足から二本足になって頭の位置が高くなった結果、地球の重力の影響が減少し、脳の成長が促された。
ニュートンが引力の存在を発見した落下するリンゴの位置が高くなると、リンゴは落下し難くなり、リンゴの実の成長が更に促され大きくなるように、二本足になった人類の脳は大きくなり、大脳皮質(Cortex)が一層から二層になった。
大脳古皮質(Old Cortex)と大脳新皮質(New Cortex)の誕生であります。
知性の誕生とは大脳新皮質(New Cortex)の誕生に外なりません。
旧約聖書の創世記でアダムとイヴが神からエデンの園を追放された理由である禁断の実とは、善悪の判断をする実のことであり、アダムとイヴの話を知ったニュートンは、実が熟して落下するリンゴが禁断の実のように映り、リンゴを落下させた力の存在を感じ取り、地球の重力(引力)と閃いたのではないでしょうか。
凡人ならリンゴが落下するのは単なる自然現象だと捉えるのに、何か力の存在を感じ取れたきっかけは聖書の話であったように思われます。
大脳新皮質(New Cortex)が誕生した結果、人類は他の生き物のように反射神経的動作から思考経由の時系列動作をする生き物に変身して行きます。
大脳古皮質(Old Cortex)は反射神経動作の指示塔であるのに対し、大脳新皮質(New Cortex)は善悪の判断動作の指示塔ですから、先ず大脳新皮質(New Cortex)で判断動作が為されてから、大脳古皮質(Old Cortex)の行動動作に移る生き物になったわけです。
思考動物の誕生であり、自己同化(Self-identification)の誕生であり、自我意識(エゴ)の誕生であり、“自分”の誕生であり、複数の自分である「私」の誕生であり、思い悩み・四苦八苦する分裂型生き物・人間の誕生であります。
人間だけが死の概念を持っている理由は、自他の概念、つまり、自己同化(Self-identification)する生き物に外ならないからです。
他の生き物も死を知っているが、自己の死は知りません。
生まれたものは必ず死ぬという死の概念は自己の死のことであって、未だ来ぬ未来の未体験のことを他人の死で以て知ることに外なりません。
他人の死を通じて自己の死を知るという統計測(確率測)であって、自己の経験測ではないのです。
他人という鏡で以て自己を知る自己同化(Self-identification)こそが、自他の区分けをする自我意識(エゴ)を生むのです。
他の生き物は自他の区分けをする自我意識(エゴ)がなく、常に全体観の中で生きています。
わたしたち人間が、死んだ経験もないのに、いつか必ず死ぬと確信を持っているのは、他人の死を見て自己の死を映す鏡を持っているからであり、その鏡こそが自己同化(Self-identification)の正体であります。
他の生き物は自己同化(Self-identification)する鏡を持っていません。
犬が水面に映る自分の姿を他の犬だと思い違いして吠える理由は、自己同化(Self-identification)する鏡を持っていない証明であります。
自己同化(Self-identification)する鏡を持っている者だけが、死の概念を持っているのです。
自我意識(エゴ)を持っている者だけが、死の概念を持っている。
知性を持っている者だけが、死の概念を持っている。
言葉を持っている者だけが、死の概念を持っているのです。