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第四十三章 最高のもてなし 宮殿でのスルタン主催の晩餐会が、その夜催された。 村木と二人の若者が主賓の晩餐会で、スルタンの側近連中はみんな出席し、一人一人自己紹介をしていった。 ほとんどが大臣クラスなのを聞いて、乾記者は感激して村木に聞いた。 「国王が直接招待された上に、大臣の方々までご一緒されるとは、あなたさまは素晴らしいお方でいらっしゃいます。ええ」 上田カメラマンは、スルタンとフタイム大臣両方から気に入られて、これからどうなるか心配で、口がからからで何も喉を通らない状態なのに、乾の方はまったく気にしていない様子にあきれかえっていた。 そこへ、とんでもないものが運ばれてきた。 羊の頭蓋骨の中に薄灰色の柔らかそうなものが入っている。 スルタンが、その柔らかいものを手掴みして、主賓の村木に差し出した。 「国王閣下、わたしは何度も頂いております。彼らは初めてなので、まずもてなしてやって頂けないでしょうか?」と言ってスルタンに向かって笑った。 スルタンは気持ち良く了解して、村木の隣の乾に差し出した。 乾記者はひょっとこみたいな例のおちょぼ口を尖らせてぽかんとしていた。 「国王閣下からの直接のおもてなしだ。早く頂きなさい」 村木に言われて、乾記者は、「誠に申し訳ございませんが、一体これは何なのでございましょうか。ええ」と質問した。 「つい先ほど料理した、羊の生の脳味噌だよ。最高のもてなしの意味だよ」 「ええ、何ですって?そんな生の脳味噌を頂くのですか。いくら、あなたさまのお友達といえども、これだけはお受けしかねます。ええ」 乾は、小さい時から両親に寵愛されて育てられてきた。それだけにある面では我がままな面を強く持っていた。 食べ物に対する嗜好が極端なところもその一つだった。 「もし、断ったらどうなるか教えてやろうか?君の脳味噌がその替わりの役目を果たすことになるんだよ。それがこの地域での慣習だ。どちらを選ぶのも君の自由だ」 「それが最高のもてなしなのでございますか?変わった風習でございますね。ええ」 スルタンが苛立ってきたのを察知して、「早く、直接手で頂いて口の中に入れるのだ!」 命令口調で村木に言われた乾は、スルタンの手に掴まれているものを自分の手で受けて、口の中に目をつぶって入れた。 目を開けて、驚いた様子で彼は呟いた。「これはまた何とも言えない珍味でございます。ええ」 新鮮な脳味噌は、若干酸っぱいが、ちょうど生牡蛎にレモンの汁をかけて食べた味とよく似ている。 「そんなに、おいしいんですか?」 自分が次の番だと察知していた上田が乾に尋ねた。 「これは、本当においしい。最高のもてなしだということがよく分かるよ」 乾がスルタンに礼をすると、満足そうな表情をして、今度は上田に差し出された。 晩餐会が終わって、別の部屋でお茶会が催された。 「いやはや。今日は感激いたしました。珍しい経験をさせて頂き、誠に以って恐悦至極でございます。ええ」 乾は、横の席に座ってくつろいでいる村木に言った。 村木は黙って頷くと、上田が気になって仕方ないらしく、「あのう、わたしたちは、今晩、本当にオカマを掘られるのでしょうか?」 深刻な表情で村木に聞いた。よほど怯えているらしい。 「君!何を失礼なことを言ってるんだ!こんなもてなしをして頂いて、お返しにオカマの一発や二発など喜んで差し上げるのが礼儀と言うものだ」 村木はその時、本気になっている乾の顔を見て、「君はまっさらではないのか?こちらの風習では女性でもまっさらでない体を差し上げたら、侮辱だと取られて、その場で、ほれ見えるだろう、あの刀で刺し殺されるんだ。君は本当にまっさらなのか?」と心配そうな顔をして尋ねた。 「あのう、お言葉を返すようで申し訳ございませんが、女性の場合はまっさらかどうかは、その最初の行為で徴(しるし)が出ますが、男性は・・・?」 「男性も、最初の時には、激痛で血だらけになるそうだ」 それを聞いていた上田は真っ青な顔になって震え出した。 「それなら、わたくしめは大丈夫でございます。ええ」 乾がまた訳の分からないことを言いだした。 村木は、もう二人に構っておれず、スルタンに明日の話しをし出した。 |