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第十五章 聖地・石立山 阿倭には吉野川がある。出雲の簸川と同じように阿倭にとって非常に重要な川である。 吉野川に合流する川で貞光川という小川があり、死国一の霊山である石立山から流れ出ている。 石立山のある峰は神山と言われ、その中心になるのが石立山である。神山の峰々に囲まれ、頂上の麓にある水の越まで行かないと、その姿は現さない。 そしてこの頂上に登ると、瀬戸の内海も、土佐の外海も見渡せる、まさに死国の見張り台のような重要地点である。 稲飯は、須佐之男を連れて石立山に行った。 「この場所は、死国の聖地で非常に重要な処である。阿倭が息をする口とするなら、この地が臍に当たる秘境の地である。死国の国はすべてこの山から始まる。わしが、この国を死国と呼ばれていたのを四国と変えたのも必ずや、この山と阿倭の国から、淡の島の向こうにある本島に大倭の国を造り、四つの島をまとめてひとつの統一国家にする人材が輩出すると信じているからだ。どうやら、その人材が須佐之男、お前ではないかと思った。だからこの山に連れて来たのだ」 自分が造ったという夫婦池を見ながら話す稲飯を、須佐之男は、ズガの父で、自分の実の父でもある李生成にラップさせてしまった。 高句麗のピョンヤンを、育ての親フツと脱出した時、18才であったフツシは李生成と直接対面はしなかったが、遠くから見たことは何度もあった。 李生成が稲飯の容貌とよく似ていること、そして李生成が自分の父で、出雲のヤマタのオロチの首領であるズガが兄であることを、すべて稲飯に告白した。 「そうであったか。やはりお前は、この四つの島の国を統一する使命を持っておる。その為には、この死国に住む白い肌で青い目をしたペルシャと百済の血の混ざった我々の支援が必ず必要となる日がやってくる。我々はこの閉ざされた死国から一歩も出ることはない。だがお前には、大倭の国を造りに行くときが必ずやってくる。その時までに出雲、西都原、阿倭の支配者になっておく必要がある。わしは、お前にすべてを託したい」 稲飯の須佐之男に対する想いは、まるで親のようであった。 石立山の頂上に登ったふたりは、そこで湧いてくる水を呑み交わしながら、宝蔵石と呼ばれる聖なる石に座って話した。 そして頂上から淡の島の向こうに見える本島を大和(ヤマト)と命名し、土佐の向こうにある海原から出ずる陽を見て、この四つの島を束ねて、日の本(にっぽん)と名づけた。 このふたりの姿が、その後二千年近くもこの宝蔵石に残像として残るのだ。 |