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第十八章 西都原の女王貴巫女 西都原の二代目の女王である貴巫女は伊謝那岐尊(イザナギノミコト)と伊謝那美尊(イザナミノミコト)の媛として生まれ、月読命(ツキヨミノミコト)という弟がいた。最初は貴巫女が昼間を、月読は夜間を管理するように父の伊謝那岐から使命を受けていたが、母の伊謝那美が死んだ後、父の伊謝那岐が貴巫女に妻の代役をさせたため、月読が義憤に燃え西都原を出奔した。 そして伊謝那岐が死んだ後、貴巫女が女王として君臨していた。 出奔した月読は瀬戸の内海を東へ行き、御室の国に行ったが、そこの豪族との戦いに負けて、伊吹の峰を越え勢州・渡会の神路山の地に落ち着いたらしい。 月読は稲飯のことを慕っていたので、稲飯の阿倭に立ち寄り、稲飯から御室の話を聞き淡の島経由で山処川(やまとがわ)の河口を上り、川内(かわち)経由で御室の地に入った。そして、御室の地の豪族・生駒彦(いこまひこ)と戦い敗れて伊吹山中に逃げ込み、更にそこから勢州・渡会の神路山から流れ出る御裳濯川(みもすそかわ)の未開の地に出てそこを開いたと、稲飯は言っていた。 一方、西都原を治めている貴巫女は、利発かつ頑健で、彦連中を顎で使うほどの剛毅な女性で、多くの彦との間で子を産んでは支配体制を固めていった。 しばらく疲れを癒していた須佐之男は、西都原に行く準備を始めた。 死国を統一した稲飯を半ば追放したほどの国だから、余ほど腹を据えてかからなければ大怪我をする。 戦にかけては、鉄器を持つ騎馬部隊に絶対自信を持っている須佐之男だったが、貴巫女というのは策略と女性の武器を縦横無尽に駆使して女王になっただけに油断は出来ない。 「いよいよ、西都原に出陣するのか?」嘆息をついて言うズガの表情が暗いのを須佐之男は見逃さなかったが、理由は分からない。敢えて訊くまいと思った須佐之男はズガに言った。 「まず築の国に上陸し、西都原の勢力範囲を確認しながら南下して行くつもりです。勢力圏である無しにかかわらず、一国づつ陥しながら南下して行きます」 「貴巫女という女王はなかなか手強い相手のようだ。普通の女性なら男の相手にならないが、突出した女性は男より遥かにしたたかで強い。気をつけて油断せぬようにな!」彼を弟として喋っているスガを、須佐之男は心強く感じた。 そして、簸川の木次から騎馬隊三百騎を従えて、須佐之男は出陣した。 見送りに来たイナダ媛は、須佐之男の無事を祈りながらも、まだ見ぬ貴巫女なる女王に須佐之男が心を奪われるのではないかと不安の面持ちであったのを、クシは慰めるのだった。 |