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第二十四章 出雲急変 須佐之男が出雲を発ってから1年半が過ぎた。 毎日が穏やかで、平和な日向の日々を過ごしていた須佐之男に死国の稲飯から連絡が入った。 出雲のヤマタのオロチが暴れ出して、クシの娘のイナダ媛を餌食にするつもりらしい。 頭領のズガが重い病になって半年ほど床に臥せ、一方、イガ、ガガ、エガ等が、ズガに力を削がれていたことに乗じて、ヤガとフガの根明組とキガとアガの根暗組が手を組んでやりたい放題の乱暴を働いているのだ。 須佐之男は貴巫女に事の詳細を話したら、 「それは、一大事です。早く帰ってあげてイナダ媛を助けてあげて下さい。ここは、わたしが治めておきますから大丈夫です」と出雲への帰郷を奨めた。 宇受売は、立場も貴巫女より軽いし、須佐之男との絆は男女の関係しかなかったので、出雲に帰ることに反対した。 『宇受売は、やはり女だなあ。困ったものだが、それがかわいいところでもある』と須佐之男も複雑な心境だったが、結局は彼も男だ。3百の騎馬隊を率いて出雲への帰路に発った。 出雲では、フガがリーダーシップを取っているらしい。フガは大の女と酒好きで、毎日、女を侍らせては酒を浴びるほど飲んでいる。彼の犠牲にあった女は数えきれない。 そしてズガから、「絶対に手を出してはならない」と言いつけられていたイナダ媛を差し出せとクシに命令したのだ。 西都原から3日で築の港に着き、そこから5日掛って出雲に着いた須佐之男一隊は、すぐにクシの館のある横田に直行した。 そしてイナダ媛が無事でいるのを確認して一安心した須佐之男は、その足でズガの住む清田のオロチの館に向かった。 オロチの館は、衛兵が大勢で固めていたが、そこを正面から堂々と入って行った須佐之男は唖然としている衛兵を尻目に、ズガの寝室にそっと入った。 ズガは眠っていたので、須佐之男は声をかけずにズガの傍で座って顔を見たら、顔に斑点が出ているのに気が付いた。 『毒鉛だ!』すぐに須佐之男は察したが、何食わぬ顔をしながら、辺りに気を配ったら殺気だっている。 『ここは、静かにしていよう』と思い、そのまま座っているとズガが目を覚ました。 「フツシではないか。日向から帰ってきておったのか?」力のない声で言った。 「はい、ズガ様がご病気だと聞いて帰って来ました」と笑いながら言うと、 「嘘を申すな。お前が、そのようなことでわざわざ日向から帰って来るか。何かあったのか、この出雲で?」 『ズガは何も知らないのだ!』と思った須佐之男はズガの顔にある斑点を指で指して、 「どうしたのですか、ご病気なのに、こんな化粧をして」と鬼のような顔をして言った。 賢明なズガはその指摘をすぐ察した。 「いや、あまり顔色が悪いので、このような化粧をして誤魔化しておるのだ」と言って同じように物凄い形相になって、そして横に置いてあった薬茶碗の方に目をやった。 『毒鉛だと、気が付いてくれたようだ』と安心して、須佐之男は、ズガが病気だと西都原で聞いた時から、毒鉛対策の特効薬を持って帰って来たのだ。 その薬をズガの布団の下に気づかれずに置いて、 「それでは、充分養生して下さい」と言って、その部屋を出た。 もうそこには、人の気配はなかった。 『これは、ややこしいことになりそうだ』と須佐之男は思いながら、対策に思いを馳せた。 |