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第二十七章 御室山の葬儀 御室山の「イナダの仇杉」と「オロチの蒲焼杉」との間に、須佐之男はズガの首を葬っていた。葬儀の当日、フガを筆頭にヤガ、キガ、そして本星のアガ等がズガの胴体を自ら担いで運んできた。須佐之男の申し入れを受けてから簸川に行って、ズガの胴体を必死になって探して来たのだ。 須佐之男はフガに申し入れた。 「ズガ様の遺体を、御室山の山頂に埋葬し、御室山をズガ様の墓陵とし、この麓に、この二本の大杉で鳥居を作り、ズガ神社を建立したいと思います。いかがでしょうか?」 ヤガ、キガ、アガは難色を示したが、ズガなき後の後継者として自負するフガは須佐之男の後押しを期待した為、その申し入れを受け入れた。 後に須我神社として須佐之男も一緒に祀られることになる、日本で初の神社である。 二本の大杉で作られた鳥居も、現在のような形ではなく、二本の丸柱を立て、その間を注連縄で結ぶもので、現在では奈良・桜井にある大神(おおみわ)神社の拝殿前に、この形の鳥居がふたつ残っているだけである。 御室山の山頂に巨大な石を並べて死者を祀る磐座(いわくら)を造り、その中にズガの遺体を埋めるのだ。 山頂に造られた磐座には須佐之男とフガだけが、ズガの遺体の入った棺を担いで上がって行った。 山頂への途中で、フガが須佐之男に話しかけた。 「フツシよ。お前がわしらと腹違いの兄弟と聞いた時は驚いた。ましてズガとは母親まで同じと言うではないか」 「それを、一体誰から聞かれたのですか?」 「ズガ本人から聞いた。わしだけではない。兄弟みんなの前でズガは、父親は李生成だが、母親は日霊女といい、ガコではないから、わしらとは腹違いの兄弟だと言ったのだ。そしてフツシとは両親とも同じ兄弟だと言っておった。わしらは、前々から余りにも違いすぎるズガに、疑いは持っておったが、まさかお前までが腹違いの子であるとは、驚いた」 それを聞いた須佐之男は、何故ズガはそんなことを彼らに言ったのか理解出来なかった。 「その時、ズガはこうも言っていた。『フツシにこの出雲の国の統治をやらせてみたい。そして自分は兄のアメと協力して漢の国と戦いたい。高句麗は漢から自由にならない限り、独立国家になれない』。だから、わしらは唖然とした。そして、日頃から精神が不安定なアガが激昂して、普段なら油断しないズガだが、やはり体が弱っていたからアガに首を刎ねられてしまった」 「それではズガ様に鉛毒を盛ったのはアガなのですか?」自分でも興奮しているのが分かる須佐之男だったが、訊かずにはおれなかった。 「そうだ。わしらもそれを初めて知って、アガを責めた。それでますますアガを興奮状態にしてしまった」 須佐之男はそこで話を変えた。 「どうして、フガ様は、そんなことをわたしに、お話されるのですか?」 「お前が、阿州の倭の国や、日向の国で大活躍しておることをズガから聞いておって、正直、お前と戦いたくない。戦ってもわしに勝ち目はない。そこで、わしにこの出雲の国を任せてくれぬか?お前は必ずこの島の国を統一する大王になると、ズガも言っておった」 須佐之男は以前からフガを悪い男だと思っていなかった。ただ女と酒になると人格が変わる異常体質だ。 「それなら条件があります」と言う須佐之男に不安そうな顔をして、 「どんな条件だ?」と訊いてきた。 「酒と女を断つと約束して下さい」 この条件はフガにとっては「死ね」と言われているのと同じである。 山頂に上がるまで、フガは黙っていた。 磐座にズガの遺体を埋めると、二人は合掌した。 「よし、約束しよう。今、ここでズガにも約束した」 ここに須佐之男とオロチのリーダー・フガとの同盟が成立した。 『これもズガ様のおかげだ』と須佐之男は心の中でもズガに合掌するのだった。 |