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第三十二章 島の国 西都原で貴巫女との間に生まれた子は女子でその名を多岐理媛(タギリヒメ)と言う。後に宗像三女神として、今の北九州に祀られている須佐之男との間に生まれた三人の媛の長女である。 そして、出雲のイナダ媛との間に生まれた子は八島野尊(ヤシマヌノノミコト)という名で、出雲での須佐之男にまつわる名前は本人も含めて八の数字が必ず入っている。 八坂、八雲、八千矛、八重垣、八島、八井・・・・と限りがない。 それは、八岐大蛇(ヤマタのオロチ)の第八番目の末子(ばっし)ズガが死に、ズガの弟のフツシ即ち須佐之男がその代わりに第八子になったのが由来である。 それを名づけたのが、高句麗の大王・李生成である。 アメが遂に死んだ。 ズガを二度失ったような経験をした李生成と須佐之男はナムチを交えて今後の方針を話し合った。 ナムチはそれほどに李生成・須佐之男から信頼されていた家臣だった。家臣という言葉が誕生したのはナムチからで、後に大己貴尊(オオナムチノミコト)となり、出雲の後継者となる大国主尊(オオクニヌシノミコト)である。彼は李生成の血脈とはまったく関係がなく、ヤマタのオロチの館にいて、その頭脳明晰さをズガから評価されて側近になっていた、やはり高句麗から一緒にやって来た人物である。 「フツシ、いや須佐之男よ。アメ・クニの双子を一気に失ってしまったわしは、今更ながらに、日霊女の血の素晴らしさに感心する。ガコから生まれた出雲の兄弟は出来が悪いが、日霊女が産んだアメ・クニそしてお前と、やはり血は大事だ。だから、出雲の国はお前に任せたい。お前が雲出る国(出雲)の八男末子相続人だ。だから八雲という新しい名を与える。ナムチよ、分かったな、今ここに宣言し、今後永遠にその通りにせよ」 「わかりました」とナムチは、そのことを頭に記録した。 須佐之男は、喜んで受け入れた。須佐之男が正式に島の国の統治者として認められた瞬間であった。 「ズガ様が言っておられました。自分は漢の国と戦をしてみたい、と。」 須佐之男が李生成に言うと、彼は笑いながら須佐之男に答えた。 「漢の国はいずれ滅びる。だがそれは新しい国が興るだけで、半島の国が大陸の国を支配するようなことは不可能だ。そして大陸に新しい国が興るたびに、半島の国は危機に陥る。だからいずれは高句麗も百済も新羅も滅びるであろう。それがこの半島の国の運命だ。だから島の国を治め、いつでも島の国へ逃れる準備をしておかなければならない。その重要な役目が、須佐之男、お前だ」 海という自然の要塞に囲まれていて、四季があり、山がある。このような恵まれた島は世界でも珍しい。 「李生成に会ってよかった。島の国の素晴らしさを再認識することが出来た」と須佐之男はナムチに言った。 |