第二十七章  最後の必然

ローマ帝国が崩壊したのはキリスト教が強くなり過ぎたからだ。
“ローマは一日にしてならず”
“世界の道はすべてローマに通じる”
人類史上最強の帝国が自ら十字架に架けた男のつくった宗教によって内部崩壊したのは、歴史の持つ皮肉以外のなにものでもない。
しかもローマ帝国は完全崩壊せずに、東ローマ帝国、神聖ローマ帝国、フランク王国、ドイツ・フランス・イタリアを中心のヨーロッパ、スペイン・ポルトガル大航海時代、大英帝国を経て、アメリカ帝国へと引き継がれていった。
これらのバックボーンにあるのがキリスト教という宗教である。
歴史の皮肉は依然続けられているわけだ。
キリスト教が歴史の表舞台を飾ってきたのに対して、光の陰の役割を担ってきたのがイスラム教の世界だ。
21億の信者数を誇るキリスト教に対して、イスラム教も14億の信者がいる。
総人口65億の半数を上回る夥しい数がこの二つの宗教によって占められているから、欧米キリスト教社会が世界をリードしてきたわけだが、その陰の立役者がイスラム教世界なのである。
欧米社会が近代社会の産みの親であり、近代社会が多数決の原理を金科玉条とする民主主義政治を主張するのは、彼らにとっては必然である。
だが、彼らにとっての必然など地球からすれば、単なる一必然に過ぎない。
“成るものは、おのずから、成る。
おのずからとは、自然にという意味である。
自ら然るという意味である。
ただ自らではない。
然るがつく。
すべてのことは偶然に起こる。
起こることはすべて偶然だ。
一つでも必然があったら、すべてが必然になり、畢竟、偶然になる。
偶然とはすべてだ。
必然は一部分だ。
アメリカ帝国が崩壊するのは、一つの必然を起こそうとしたからだ。
一つも無理強いすれば、すべてが崩壊する。
一つの必然が、二つの必然を生み、三つの必然を生み、・・・最後の必然を生む。
それが崩壊であり、絶滅である”
最後の必然が遂にやって来たのだ。