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第三十四章 現代版空中庭園 ユーフラテス川とチグリス川は一つになってシャトル・アラブ川となり、ペルシャ湾に流れ出る。 ユーフラテス川に映し出された空中庭園の中に入っていったモハマッド・ハッサンは現代版ネブカドネザル二世なのかも知れない。 ネブカドネザル二世が隣国メディアから嫁いできた愛妻アミティスのために建設した空中庭園。 故郷の多くの草木が茂るメディアの野山が忘れられず、毎日淋しい日々を過ごしていた王妃アミティスを慰めようと、メディアの国の山に似た階段状の庭園を造った。 42メートル×30メートルの中に丸天井の細長い部屋がいくつも並べて造られている。 珍しい草木が植えられ、一年中青々と、そしてまた色とりどりの花が咲いていて、これらの草木を暑いバビロンで常に青々とさせておくためには、七段になった各テラスまで毎日水を運ぶ仕掛けが要る。 オリエント世界観における中東世界とは僻地を意味していた。 人類の歴史のルーツであったメソポタミア地域を中東(Middle East)と僻地扱いしたのが、欧米社会による近代社会だ。 ところが、二十世紀に入って、嘗てメソポタミアと呼ばれ、今では中東(Middle East)というこの僻地に巨大な油田が発見された。 サウジアラビア、イラク、クエート、イランといったアラブ産油国の油田は悉く、嘗てのメソポタミアの地下に埋蔵されているのだ。 砂漠の世界に世界最大の油田が誕生したわけだ。 空中庭園の水の供給の仕掛けと関係がある。 油田の構造は何段ものハット(縁のある帽子)状になっている。 世界最大のサウジアラビアの油田は16枚のハットが地中に広がっている。 一枚一枚のハットが、空中庭園の各テラスなのである。 石油が化石燃料と言われる所以は、大昔に青々とした草木が堆積岩となり、そこに地下水が混ざり合った結果の産物だからだ。 メソポタミアの地に巨大な油田が埋蔵されているのは、ネブカドネザル二世が建設した空中庭園のお陰であり、ユーフラテス川とチグリス川が水の供給をしていたことを世界は知らない。 七段になった各テラスまで毎日水を運ぶ仕掛けが今でも、この地域の油田の源泉になっているわけであり、その仕掛けに手を加えれば、油田の状況が大きく変化する。 この地域の油田の原油産出量は2000万バレル/日で、世界の石油需要8000万バレル/日の25%を占めているから、油田の状況が激変すれば、世界に大きく影響する。 特に、石油の自給率の低い国は命取りになる。 原油輸入主要国は、一位はアメリカの4億9000万トン(24.7%)であり、二位の日本の2億1000万トン(10.3%)、三位の大韓民国の1億2000万トン(5.9%)、その後をドイツ、フランス、イタリア、インド、中国、スペイン、オランダと続く。 ところが、石油の自給率では、サウジアラビアは423%、アメリカが36.9%、日本は0.2%、大韓民国は0%、ロシアは184%、イギリスは143%、中国が76%・・・となる。 つまり、原油供給事情が激変すれば、命取りになる国は大韓民国と日本だけなのである。 まさに、メソポタミア地域は世界の火薬庫であり、ひとたびこの火薬庫に火がつけば、日本列島と朝鮮半島が激震するのだ。 現代版ネブカドネザル二世が企んでいるバビロン捕囚の対象は、東の臍の地であったのだ。 |