|
第五十章 開始のゴング モハマッド・ハッサンと村木兵庫はマリオットホテルを別々に出て、カイロ空港に向かった。 カイロ空港は第一空港から第三空港まであるアフリカ大陸最大の空港である。 北イエーメンの首都サヌアに直行する便は週に一便しかない 「これを逃したら、また一週間待たねばならない・・・」 村木は焦った。 「マレーシュ」 モハマッドが言うと、村木は余計焦って、皮肉っぽく応酬した。 「IBM」 モハマッドは黙ってしまった。 “IBM”は“インシュアラー・ボックラ・マレーシュ”の略語(abbreviation)だ。 “インシュアラー”は“アラーの神の思し召すままに”という意味だ。 “ボックラ”は“明日”という意味だ。 “マレーシュ”は“気にしない”という意味だ。 アラブ人でない者がアラブ人にこの三つの言葉を吐かれると要注意のシグナルである。 約束事は先ず間違いなく破られる。 村木は何度も煮え湯を飲まされてきた。 「今度は本当のIBMかい?」 村木はからかうようにモハマッドに言った。 「こんどはビジネスじゃないからね・・・ ミッションだからね・・・・IBMはなしだよ」 二人は顔を合わせて笑った。 そうこうする中に、カイロ第三空港に時間通りに着いたらしい。 イエーメン人らしい顔付きの連中が空港の外まで並んでいるからだ。 サヌア行きイエーメン航空便のチェックインの為に待っている連中が空港の外まで並んでいるのである。 『いよいよミッション開始のゴングが鳴るんだ!』 モハマッドは村木の大きな背中を見ながら心の中で呟いた。 |