第八十四章  アラビアンナイトの天の川

カイロの夜はパリの夜に引けを取らないほどエキゾチックだ。
昼間のカイロと様相が一変する。
イスラム世界では極めて珍しい都市だ。
ナイルの恵みのお陰だろう。
イスラム教の峻厳な戒律もカイロにかかったら無力だ。
ムハンマドが開祖であるイスラム教の世界はアラビア半島だけだと言っても過言ではない。
14億いるイスラム教徒だが、アラビア半島にいるイスラム教徒は精々1000万人だけで、残りはどこかの大陸か島々に属している。
イスラム教徒の数でいけば、北アフリカやアラビア半島とインド亜大陸に挟まれた地域が圧倒的だ。
そんな中で、エジプトがアラブ連合国の盟主になれたのは、一重にナイル川のお陰である。
カイロの夜景は、天から眺めれば、まさに天の川だ。
天の川の中で一際輝いているのが、ギザのピラミッドに通じるサハラ通りである。
ハンナは天の川の中州でモハマッドに抱かれた。
モハマッドは感動した。

誰も知らない夜明けが明けた時
町の角からステキなバスが出る
若い二人は夢中になれるから
狭いシートに隠れて旅に出る

昼間のうちに何度もKissをして
行く先をたずねるのにつかれはて
日暮れにバスもタイヤをすりへらし
そこで二人はネオンの字を読んだ

ホテルはリバーサイド
川沿いリバーサイド
食事もリパーサイド
OH!リバーサイド

チェックインなら寝顔を見せるだけ
部屋のドアは金属のメタルで
シャレたテレビのプラグはぬいてあり
二人きりでも気持ちは交(かよ)い合う

ベッドの中で魚になったあと
川に浮かんだプールでひと泳ぎ
どうせ二人は途中でやめるから
夜の長さを何度も味わえる

ホテルはリバーサイド
川沿いリバーサイド
食事もリバーサイド
OH! リバーサイド

ホテルはリバーサイド
水辺のリバーサイド
レジャーもリバーサイド
OH!リバーサイド
リバーサイド リバーサイド

ハンナは失望した。

ROW & ROW
ROW & ROW
ふりかえるな
ROW & ROW

おまえが十九 おれ二十
忘れもしない この河に
二人の星の ひとかけら
ながして泣いた 夜もある
ROW & ROW
ROW & ROW
ふりかえるな
ROW & ROW

あれからいくとせ 漕ぎつづけ
大波小波 ゆれゆられ
極楽見えたこともある
地獄が見えたこともある
ROW & ROW
ROW & ROW
ふりかえるな
ROW & ROW

たとえば男は あほう鳥
たとえば女は わすれ貝
まっかな潮が 満ちるとき
失くしたものを 想い出す
ROW & ROW
ROW & ROW
ふりかえるな
ROW & ROW

おまえとおれとの あいだには
ふかくて暗い河がある
それでもやっぱり 逢いたくて
エンヤコラ今夜も 舟を出す
ROW & ROW
ROW & ROW
ふりかえるな
ROW & ROW