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第十八章(Part 1) 院政の目的 治天の君が誕生すると必ず国が乱れる。 “実権を握った国王が一体誰なのか?” この国が外国と対峙した際、相手方からいつも詰問されるのが、この問題である。 天皇が実権のある時期は日本史上極めて稀である。 天皇は権威だけで実権は代行者が握ってきた時代が殆どである。 蘇我一族、藤原一族という天皇の外戚政治。 平清盛の平氏、そして武家政治を始めた源頼朝の源氏、北条執権政治、足利室町幕府、そして管領政治。 最後に徳川幕府による鎖国政治。 徳川幕府が未曾有の三百年近い政権を維持出来たのは、まさに鎖国政治によるもので、諸外国との国交があれば、他のアジア諸国のようにヨーロッパ帝国主義の餌食になっていたであろう。 武家支配の中でも天皇家は依然、その権威を保っていたのは如何なる理由からであろうか。 それは後円融上皇を以って実質上の治天の君が消滅したからである。 天皇が国の代表であっても、実権を握っている代行者がいるだけでもややこしい話なのに、「治天の君」と称する存在がまだ他にいれば、国王と名乗る人間がひとつの国で三人もいることになる。 「治天の君」の特徴は、実権はあるが責任はないという身勝手な思想から生まれたものだから、外国のように権力と責任が表裏一体となっていない。 この特徴は世界に類を見ない悪弊であり、現代日本においても、この悪弊は厳然と残っている。 政治と行政の関係。権威は政治家、実権は官僚。 政治家の派閥の領袖と内閣の関係。 大企業の会長と社長との関係などはまさに治天の君と天皇との関係そのものである。 問題が起これば対外的には社長の責任になって会長は責任回避でき、かつ社内人事権は会長が握っている。だから社長は会長になるまでの見習い期間で、その間は、ただおとなしく会長の言うことだけを聞いておけば良いと思って仕事に精を出さないで、ただ現状維持だけにやっきになる。 一方、会長は責任問題になれば社長に押し付ければ良いと高を括っていて、役員人事のことだけに執着して、これまた仕事に精を出さない。 これが現代日本の大企業の縮図であるから、国が衰退するのは当然である。 義満はそれを一本化しようとした。 「日本国王はひとりだけでよい」 貞子に言った義満の顔に、次の打つべき手を既に決断している様子が表れていた。 |