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第二十五章(Part 1) ままならぬ女御 身籠った厳子だが、上皇の寝所お召しには応じていた。 義満の官位叙任権を撥ねつけた後円融は、近侍の者たちに、我が権威を大いに見せ付けることが出来たと満足し、厳子との関係もいたって順調だと思っていた。 厳子自身も、大天狗に変貌した義満に不安を感じていた反動で、上皇のお召しに進んで応じていた。 そこへ孕んだことを知った厳子は、それが天狗の種であることを直感した。 義満は、厳子が自分の子を孕んだことを貞子より伝え聞き、喜色満面で狂喜した。 上皇の方に気持ちが傾きかけていた厳子は、自分が孕んでいることを上皇には教えずに、厳子の方から積極的に連夜の閨事を上皇に求めた。 そして、とうとう厳子は連夜の閨事の過労で、出血して腹の子を流してしまった。 上皇には、閨事の過労で風邪の病に臥したと伝え、上皇から、「体を癒すことに専念するよう大事に」と心篭ったお言葉まで賜り、三条家の実家で体を癒した。 貞子は、厳子が流産したことを聞き、義満に伝えた。 「何ゆえ、流産したのか?」 「分かりませぬ。厳子の話では、風邪の病が高じたのが原因だと申しておりました」 上皇に対する怒りのエネルギーを上皇の后の体内で爆発させることで、収まっていたものが再び再燃した。 「厳子を、今夜呼べ!」 貞子に命じたが、さすがの貞子も流産した直後の厳子に、義満の激しい情交の相手をさせることは出来ないと断った。 鬱憤を晴らせぬ義満は、仕方なく尼になった按察局(あぜちのつぼね)を召そうとした。 しかし、按察局事件で後円融上皇が持明堂事件を起こし、「自殺してやる!」と喚き立てたのを、生母の崇賢門院に説得されやっと収まった事件の張本人である按察局に手を出すことは余りにも不条理だと、又もや貞子から諫言された。顔を真っ赤にして黙っている義満に、貞子は言った。 「今夜は、わたくしを弄びなされ」 義満は駄々を捏ねる子供のように貞子の胸に顔を埋めた。 |