第二十七章(Part 2) 地中で繋がる池

下鴨神社から太秦の木嶋神社まで三里はある。
橿原教授の話では、下鴨神社の糺の池と木嶋神社の元糺の池とが地中でつながっていると言う。
「今からすぐに木嶋神社に行こう。その前に糺の森の中にある池跡をきっちりと確認しておくことが大事なんだ」
教授はそう言って森の中に入って行った。
雄仁もあとをついて行った。
大きな石がごろごろしている中を通って、十メートル四方ぐらいの池跡のような処に入った教授は、手で土を掘ってみた。
「この池は本当は水でいっぱいの状態なんだが、それがすべて地中に隠れているんだ。だから土が湿っている。この下にはいま水が溜まっているんだ。だから木嶋神社の池は枯れているはずだよ。それを確認しに行こう」
川端通りから今出川通りに出て路面電車で大宮まで行き、そこから嵐山行きの電車に乗り換えた二人は、「蚕の社駅」という奇妙な名前の駅に下りた。
「変わった名前の駅ですね」
雄仁が教授に言うと、
「蚕の社とは木嶋神社の通称だよ。京都の絹織物産業はここが発祥の地なんだ」
さすが京都出身だけに橿原教授は良く知っている。
「さあ、ここから五分ぐらいで木嶋神社に着く」
教授は早足でどんどん歩いて行った。
教授のあとを走るようについていった雄仁の前に小さな鳥居が見えて来た。
教授は一目散に境内を通り過ぎて本殿の左側にある方に走って行った。
「やはり、水が一滴もない!」
息を切らしながら、教授は池の前で座り込んでしまった。
後をついて行った雄仁の前に変わった光景が広がった。
「何と奇妙な!」
驚きの声を出した雄仁に教授が言った。
「あれが三柱の鳥居だよ。上から見ると正三角形の形をしている変わった鳥居だ」
「これが鳥居ですか?どうして池の中に鳥居があるのですか?鳥居と言うのは人間がくぐる門みたいなものでしょう?池の中ではくぐることが出来ないじゃないですか!」
「だが、今だったら池に水がないからくぐることが出来るだろう」
そう言って、教授は水のない池の中に入って行った。